「歳を重ねれば重ねるほどクレジットカードの審査に通りやすくなる」「若いうちにクレジットカードを作らないと歳を重ねたときに審査に通りにくくなる」といったようにクレジットカードに関する噂はたくさんあり、何が真実なのかわからなくなっていませんか。
結論からいえば、前者は全くの嘘です。年齢とともに収入が多くなることからそのように言われるようになりましたが、後者のように若い頃にクレジットカードを作成したことがないと、クレジットヒストリーとよばれるクレジットカードの利用実績が構築できないため、たとえ収入が増えたとしても、それが審査にプラス材料になるとは言い切れません。事実、30歳以降にはじめてクレジットカードを作成しようとして審査に通らなかった、という事例はよく耳にします。
日本クレジット協会から発表されたとある統計を見てみたところ、クレジットカードの審査に関する年齢との深い関係を見つけることができました。
統計からみえてきたクレジットカード事情
まずは、「日本クレジット統計2016年版−13ページ目」の「(5)性別・年代別契約数」を見ていただきたいと思います。
少し見にくい統計となっていますので、こちらで特に見てもらいたい箇所を表にしてみました。
単位:万件
|
〜22歳 |
23〜30歳 |
31〜40歳 |
41〜50歳 |
51〜60歳 |
60歳〜 |
2013年 |
287 |
2,105 |
4,369 |
5,536 |
4,771 |
6,433 |
2014年 |
301 |
2,070 |
4,220 |
5,612 |
4,877 |
6,675 |
2015年 |
328 |
2,059 |
4,091 |
5,660 |
5,006 |
6,896 |
2016年 |
358 |
2,075 |
4,020 |
5,704 |
5,217 |
7,244 |
この統計をみて一番最初に感じるのが、61歳以上のクレジットカード契約数がとても多いこと。単純に超高齢化社会の日本は61歳以上の人口が多いということも影響していますが、それを差し引いても多いです。筆者にとってすごく意外な結果でした。
30歳までの契約数を全て足しても、どの年も「61歳以上」には追いつきません。「23〜30歳」と「31歳〜41歳」の契約数を全て足しても、「61歳以上」に届かない年もあります。「23〜30歳」と「61歳以上」を比較すると、常に契約数は4.000万件〜5.000万件ほど違いがあります。
さらに「15ページ目」の「(6)入会経過年数別契約数」を見てみましょう。入会経過年数別契約数は、入会してどれぐらい経っているか、をまとめた統計です。こちらもまた、特に見てもらいたい箇所を表にしてみました。
単位:万件
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3年未満 |
3年以上
5年未満
|
5年以上
10年未満
|
10年以上 |
2013年 |
5,206 |
4,308 |
7,270 |
6,718 |
2014年 |
5,242 |
3,614 |
7,804 |
7,094 |
2015年 |
5,514 |
3,066 |
7,936 |
7,523 |
2016年 |
5,747 |
3,100 |
7,522 |
8,250 |
平均で最も多いのは「5年以上10年未満」、次いで「10年以上」、「3年未満」、「3年以上5年未満」と続きます。
クレジットカードの有効期限は、個々で異なりますが、2年〜6年の間で設定されることが多いので、1回目もしくは2回目の更新でカードを切り替える方が多いことになります。
年齢を重ねる=審査が甘くなるわけではない
統計から「61歳以上」の契約数が多いことはわかりました。ただこれが年齢とともに審査が甘くなることに繋がるとは言えません。65歳以上になると定年退職を迎え、安定した収入を得にくくなりますので、新規にクレジットカードを作るのは難しくなる傾向があります。
そこで、高齢者は働いていたときに作ったカードを更新し続けるという形で、クレジットカードを継続利用できていると考えられています。それが、統計の「10年以上」契約している方がとても多いことに繋がっていると推測できます。安定した収入があった40〜50代で作ったクレジットカードを、今もなお所有し続けているわけです。もしくは、あえて自ら解約はせず、自動で更新されるパターンも多いかもしれません。
ただし、更新時にはある程度の審査がありますので、支払いの遅延が何度もあったりすると、更新できない可能性が出てきます。また、契約時は職に就いていたが無職の状態が長く続いている、返済の延滞を何度も繰り返した、などネガティブな情報が増えてくると、更新できない可能性も少なからず出てきます。継続して利用したいと考えている方は、このあたりは特に注意しなければなりません。
高齢者が審査に受かるためにすべきこと
では、定年退職を控えたor迎えた高齢者は、新規にクレジットカードを作ることは無理な話なのでしょうか?いえ、そんなことはありません。
というのも、総務省が発表した統計によれば、「55〜59歳」「60〜64歳」の高齢者の就業率は年々増加傾向にあるそうです。60〜64歳の就業率に関しては、「15歳以上」を上回る就業率となっているため、労働意欲はむしろ高齢者のほうが高いそうで、収入がある方は少なくなさそうです。
また、東京商工リサーチが発表した全国の社長の年齢調査(2011〜2016年)によれば、60代と70代以上が全体の半分以上を占めていましたので、経済的な余裕がある方も少なくないです。
それでも、一般的には60代後半ともなれば、年齢を理由に定年退職の対象となり、長く勤めてきた会社を辞めることになるはずです。加齢とともに安定した収入を得ることが難しくなると推測できますので、審査が厳しくなる傾向は仕方ないといえるでしょう。明記こそされていませんが、カード会社によっては年齢を理由に審査を落とすところもなくないです。年齢が一つの目安になることは紛れもない事実なのです。
年齢以外でのプラス査定を活かすべし
では、高齢者がクレジットカードの審査に受かるために何をすべきか、ということになるのですが、審査においてプラス査定となることをすべて利用していけば、審査に受かる可能性は上がってきます。
職業について
まず、「雇用形態」や「勤続年数」といった職業に関することですが、現在、正社員ではなく契約社員や派遣社員、パート・アルバイトであっても働いているのであれば、それはプラス査定になってきます。最も安心できるのが正社員であることには変わりありませんが、それ以外でも決してマイナス査定になるわけではないので、働いているのであれば、雇用形態・勤続年数ともに正直に申告しましょう。
勤続年数は、パート・アルバイトでも1〜3年以上あれば、高齢者にとってはかなりのプラス査定になってきます。半年以上になってきてやっと年収が予測できるようになるので、勤続年数が半年未満だとマイナス査定になってしまう可能性がありますが、無職よりは評価されます。
収入について
また、「収入」についても正しく申告することが求められます。わずかな収入でも、あるとないのとでは印象が違いますから、収入が少しでもあれば正直に申告しましょう。
収入は、大体がわかればいいので、145万円だったら150万円というように10〜15万円程度であれば色付けしても問題ないでしょう。145万円よりは150万円のほうが見栄えはいいです。
ここで一つ気になるのが、「年金受給者」はどうなるのか、ということですね。年金受給者も安定継続収入があると判断されますので、会社員だった場合は国民年金と厚生年金、自営業だった場合などは国民年金や国民年金基金の合計の受給額を収入として申告しましょう。年金受給者でもクレジットカードを新規に作成できます。
住居形態について
「住居形態」も実はプラス査定となることがあります。高齢者にもなれば自分所有や配偶者所有の持ち家がある方が多いですが、実はこれはプラス査定です。さらに、60〜70代だと若い頃に抱えていた住宅ローンを完済している可能性が高いですよね。すると、月々の固定費が減り、消費に回せる可能性が高いと判断されます。これが、マンションやアパートの賃貸住まいとなると、月々の固定費が収入の大半を占めることになる可能性が高く、審査に少なからず悪影響を及ぼす可能性が出てきます。
世帯人数について
「世帯人数」についてですが、これはかなり重要です。簡単にいえば、同じ生計で暮らす人数のことですが、この項目から、息子さんや娘さんなどに生活を支えてもらっていることがわかれば、審査においてプラス査定となってきます。事実、収入が全くない専業主婦がクレジットカードを持てるのは、旦那さんに返済能力があると判断されているためです。これと同じで、同一生計の息子さんや娘さんに返済能力があれば、収入が全くない高齢者でも新規にクレジットカードを作れる可能性が出てきます。
虚偽申告は絶対にやめましょう
審査に受かりたいがために、高齢者の中には年齢詐称をされる方もいるようですが、申込に際して、免許証などの本人確認書類の提出を求められますので、年齢詐称は全くの無意味どころか、虚偽申告は信用性を欠くため、審査落ちの大きな原因になってしまいますので、絶対にやめましょう。
たしかに、高齢者の場合、年齢が審査の際にマイナス査定となってくる場合がありますが、虚偽申告ほどマイナス査定となることはないので、それなら年齢を正確に申告したほうが何倍もマシです。
虚偽申告は信用を得られない最大の要因となってきますので、年齢以外にも、収入や勤続年数など嘘をつけてしまう項目こそ正直に申告することが信用を得るために大事なことになってきます。
審査に落ちたら家族カードを検討すべし
ここまで対策をしても審査に落ちてしまった場合は、「家族カード」を作ることをおすすめします。
家族カードとは、そのクレジットカードの契約者の家族が利用できるクレジットカードのことです。契約者に十分な返済能力があることが認められていますので、家族カードは基本的に審査なしで作ることができます。
契約者と生計が同一であれば家族と見なされますので、配偶者はもちろんのこと、その親にも適用されます。つまり、安定した収入のある息子さんや娘さんと一緒に暮らしている両親なら、家族カードが作れるというわけです。これなら高齢者でもクレジットカードを持つことができます。別居でも、生計が一緒であれば家族カードの対象となることがありますので各カード会社に確認してみましょう。
無料or有料で家族カードを追加
家族カードの特性は、カード会社によって異なります。年会費無料で追加できるところもありますし、有料で1枚につき数百円程度で追加できるところもあります。年会費や手数料については、各カードの詳細をよく確認してから追加の手続きをしましょう。また、有料だった場合、契約者に承諾を得ることも忘れてはいけません。年会費や手数料をご自身で負担できるのであれば、承諾を得やすいのではないでしょうか。
家族カードのポイントについて
家族カードでもポイント還元率が低くなることはないので、契約者と同じ還元率のままポイントを貯めることができます。ただし、貯めたポイントは契約者に一括でまとめられるケースが多いので、自由に使うことは少し難しいかもしれません。それでも、クレジットカードを使える状況を作り出してくれた契約者には感謝の気持ちが大きいでしょうから、ここは妥協し、ポイントはせめてものお礼の気持ち、ぐらいに思っておくといいかもしれません。
利用限度額は契約者と共有
一点注意したいのは、家族カードの追加によって契約者の利用限度額を圧迫してしまうことです。例えば、契約者の息子さんの利用限度額が100万円だとしたら、家族カードを受け取った父親のあなたは、その範囲内で息子さんと一緒に利用することになります。本来、息子さんが一人で利用できる枠だったわけですから、節度を守りながら利用することが求められます。
サービス内容について
カード会社によって異なりますが、基本的には契約者と同じサービスを受けることができるカードが多いです。クレジットカードの付帯サービスの代表例としては、旅行傷害保険、紛失・盗難保険があります。これらの保険が自動的に付帯している場合は、クレジットカードを持った時点で受けられるサービスとなってきます。利用できるサービスはそれぞれ異なりますので、詳細はカード会社のウェブサイトなどからご確認ください。
高齢者のクレジットカードの心得
60歳以上の方のクレジットカード事情について見てきましたが、審査に受かったあとの心得について少しお話しておきたいと思います。というのも、昨今、高齢者を狙った詐欺が非常に多く発生しているためです。このような事件に巻き込まれることなく、安心してクレジットカードを利用してもらいたいと思います。
振込詐欺と不正利用に注意
クレジットカードの利便性が昨今、悪用されはじめています。その一つが「振込詐欺」および「不正利用」です。振込詐欺といえば、銀行のATMを使って振り込むイメージがあるかもしれませんが、最近はクレジットカードでの支払いを要求する詐欺も急増中です。
例えば、孫になりすました詐欺師が「おばあちゃん、今週中に自動車税を払わないと追い出されてしまうんだけど、現金がなくて払えないんだ。だから、クレジットカードで払いたいんだけど、おばあちゃんの借りてもいい?」と電話をかけてきたとします。本当の孫なら、助けてあげたくなりますよね。自治体によっては自動車税がクレジットカード決済可能なので、本当にあり得る話です。家賃などもクレジットカード決済できる管理会社が増えてきているので、色々なパターンが想定できます。
ここで、「14〜16桁の番号」に加え、「氏名のローマ字表記」「3桁のセキュリティコード」「暗証番号」まで聞き出してきたら、詐欺ではないか、と疑いましょう。この4つさえわかってしまえば、様々なシーンでクレジットカードの利用が可能になってきます。カード情報を自ら教えてしまうと、盗難されて不正利用された状況には100%当てはまらず、不正利用の補償の対象外になってしまう可能性があるので注意が必要です。家族間の電話・メールには合言葉を用いるなどして、家族間で詐欺&不正利用の対策をしていきましょう。
意図しない利用に注意
高齢者ならではの事例が一つあります。それが意図しない利用です。高齢者と切っても切れない関係にあるのが「認知症」です。認知症は早ければ40〜50代でもなる恐れがあると言われており、理解力・判断力を低下させることがあります。
認知症のせいで利用した記憶がない、なんてことが実際に起こり得るのです。しかし、意図しないクレジットカードの利用でも、契約者が使ったことには変わりないため、この場合は補償の対象外となる可能性があります。そういう意味では、高齢者が個人でクレジットカードを持つよりも、利用明細を家族間で共有できる家族カードにしたほうが初めから安心できるかもしれません。
節度を守って利用しましょう
振込詐欺や不正利用、意図しない利用を避けられるよう、様々な対策が必要になってきますが、クレジットカードを使ううえで最も大事なのは節度を守って利用することです。返済が可能な範囲で、計画的に利用するようにしなければなりません。使いすぎる方が多いのは事実ですが、節度を守って利用すれば、非常に便利なものなので、これを機会に今一度クレジットカードについて家族間で話し合いをしてみましょう。
家族カードがあるおすすめのクレジットカード
筆者がおすすめしている審査が甘いクレジットカードの中にも、家族カードが用意されているカードは多数ありますが、個人的におすすめなのは「PayPayカード」や「リクルートカード」です。
PayPayカードの家族カードは、無料で追加できます。ポイントをPayPayボーナスで貯めることができるので、PayPayでそのまま利用できたりして、他のカードに比べて利用シーンが多いのが嬉しいところです。デザインもシンプルなので、ご家族の方もデザインを気にせずに利用できると人気です。
リクルートカードの家族カードも同様に無料で追加できます。本契約者と同様、1.2%の高還元率のまま、リクルートポイントとして貯められます。旅行損害保険やショッピング保険といったサービスを受けられるのが良いところです。JCBなら8枚、Mastercard/VISAなら19枚まで家族カードは発行可能なので、申し分ないです。
高齢者はクレジットカードより電子マネー向き?
ここからは余談なので、お時間のある方だけご覧ください。
先日、筆者は、地元のイトーヨーカドーに十数年ぶりに行ったのですが。小さい頃に母親とよく訪れていた家族連れが多い活気のあったイトーヨーカドーは、地方ということもあってか、現在は利用者の多くが高齢者となっていました。
食品を買おうとレジに並んでいると、皆さんのある行動に驚かされました。そうです、ほとんどの方が電子マネーのnanaco※で支払いをしていたのです。高齢者=現金払いを好む、というイメージが強かったので、非常に驚いたのですが、それと同時に電子マネーは確実に普及していると感じました。
※nanacoはセブン&アイホールディングスが展開する電子マネー。傘下のイトーヨーカドーでは、基本的にどの店舗でも使えます。
電子マネーは若者よりもむしろ高齢者にはかなり向いているので、これは自然な流れなのかもしれません。nanacoはデポジット方式なので先にチャージしなければなりませんが、チャージは専用の端末やレジでできますし、小銭を出す手間を考えると、nanacoを使ったほうが圧倒的にスピーディーです。
電子マネーはクレジットカードに付帯することも可能ですが、基本的には単体で持つことも可能です。なので、安定した収入を得られなくなったことが原因で、クレジットカードを更新・新規作成できなかった方は単体で電子マネーを使っている可能性が高そうです。
イトーヨーカドーでお得になるセブンカードプラスを使われている高齢者も多かったので、これまた意外でした。冒頭の統計からもわかるように、高齢者ほどクレジットカード契約数が多いので、このように日常使いで便利になるカードを選んでいるのかもしれません。ちなみにセブンカードプラスをイトーヨーカドーで使うとポイント還元率がアップします。。
また、セブンカードプラスからnanacoへのチャージで200円につき1ポイント貯まるので、nanacoへチャージし、支払いでさらにポイントをゲットする(100円の支払いにつき1ポイント)、ポイントの二重とりをされている方も多いようです。このお得さに気づいている高齢者が多いとは思えませんが、便利で損をすることはまずないので、nanacoの利用が増えているのはとても自然な流れなのかもしれません。