クレジットカードの審査に通ったはいいものの、利用限度額がたった10万円しかなくて満足に利用することができない、という悩みを抱える方は意外と多いです。
審査は最大の難所といえますが、次点で利用限度額の設定金額を決める与信審査も大きな難所といえます。利用限度額は支払いを済ませないと枠が回復しないので、2ヶ月程度は何も考えずに利用できる額を設定してもらえないと不満を感じやすいです。
しかし、今後は利用限度額で悩むことは少なくなるかもしれません。というのも、このたびの法改正によってクレジットカードの与信審査でAIの活用が可能になったことで利用限度額が上がるかもしれないからです。詳しくは後述しますので、気になる方はぜひ最後までチェックしてみてください。
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与信枠とは
まずは「与信枠」という言葉について知っておく必要があります。与信枠とは、カード会社から契約者に与えられる信用の枠のことで、別名「利用限度額」とも言われています。
なぜ、与信枠を設定する必要があるのかと言うと、答えはとてもシンプルです。契約者の個々の属性に合わせて与信枠を設定してあげないと使いすぎて返済不能になってしまう人が出てきてしまうため、返済できる範囲の適切な与信枠を設定しているのです。
例えば、あなたの年収が300万円だとしたら、そのあなたに500万円の与信枠を与えることが妥当だといえるでしょうか。年収を超えるような与信枠を与えてしまうと、使いすぎたときに返済に困ることは容易に想像できますよね。このようなことにならないために適切な与信枠を設けてあげる必要があるのです。
与信枠は、あなたがカード会社からどのぐらい信用されているのか、を示すものでもあります。与信枠が10万円の人よりも100万円の人のほうが信用されているように、与信枠が大きければ大きいほどカード会社からの信用度が高いと言えます。
ただし、与信枠が10万円しかないからといってカード会社から全く信用されていないわけではありません。そもそも、全く信用されていないのであれば、審査に通ることすらできません。ひとまず審査に通っている時点でそれなりの信用を勝ち得ているものだと認識して構いません。
大事なのは、カード会社から与えられた与信枠を大切に使っていくことです。先述したように、与信枠はカード会社からの信用度を示すものですから、その枠が今後減ることがないように、支払いを滞りなく行っていくことを第一に考えて利用していく必要があります。
与信審査とは
与信審査とは、カード会社が申込者の信用度・返済能力を調査するための審査のことです。もっと簡単に言えば、契約者に対してどのぐらいの与信枠(利用限度額)を設定するのが適切かを決めるための審査です。
新規にクレジットカードを作るときやクレジットカードが有効期限を迎える際に新たに更新カードを発行するときに与信審査は行われます。
クレジットカードは、利用した金額をその場で精算せず、後日、口座引き落としや振込といった方法で精算する後払いの性質を持っているため、ある程度の返済能力があると認められないと審査に通ることすらできません。これがいわゆる「入会審査」です。
入会審査と平行で行われるのが「与信審査」で、入会条件を満たすとひとまず入会審査は合格となり、次に与信審査を行って、申込者に対していくらの与信枠(利用限度額)を設けるかを決めていくことになります。
一般的に年収が多い人のほうが与信枠は多く与えられる傾向があります。これは、年収などから生活維持費やカードの年間支払総額を想定して利用限度額を決めるのが慣例となっているからです。
年収が少ないと生活維持費や年間支払総額も低くなると想定されますので、低収入の方はどうしても与信枠は少なく設定される傾向があります。実際に収入が低い方は利用限度額が10〜30万円ほどしか設定されない事例がたくさんあります。
専業主婦や学生になると収入が不安定もしくはゼロの場合が多くなるため、利用限度額が10万円前後しか設定されない事例がたくさん出てきます。ただ、学生に関しては学生専用カードなるものがあり、これは通常のカードよりも利用限度額を低く設定する代わりに審査に通りやすくする目的があるため、与信枠が少なくなるのは仕方ないです。
特に現行の与信審査では収入が重視されがちですが、収入は返済能力を見極める大きな要素となることは間違いないので、収入によって与信枠を設定するのは適正だと筆者は感じています。
法改正により与信審査にAI活用が可能に
さて、今回の本題はココです。2020年6月に「改正割賦販売法」が衆院本会議で成立し、2021年4月に施行される見通しとなっていることをご存知でしょうか。
割賦販売法とは、クレジットカード番号等の適切な管理やクレジットカード番号の不正利用の防止を講じることを義務付ける法律のことです。簡単に言えば、ユーザーに対して安心してクレジットカードが利用できる環境を整えましょう、という法律です。
割賦販売法の歴史は長く、昭和36年の施行から何度も改正を繰り返し、ここ数年は特に政府のキャッシュレス政策によるクレジットカード契約者の増加やそれに伴う不正利用の増加を対策するために改正案はたびたび施行されています。
2020年6月の今回の割賦販売法の改正案によって、これまで年収などから人の手によって算定していた与信枠(利用限度額)の設定を「AI=人工知能」を活用して算定することが可能になります。
「え?たったそれだけのこと?」と思う方は多いかもしれませんが、これは歴史的な一歩となる可能性が高いです。近年、AIは非常に注目されている技術の一つで、様々な分野での活用が期待されており、ついにクレジットカード業界にも導入されることとなったのです。
与信審査にAIが活用されるようになることで、収入以外の要素も与信審査に採用されることになりますので、今後、利用限度額が上がる人が増える可能性が高いです。そのため、今回の法改正はこれまで少ない利用限度額に困っていた方にとっては朗報となる可能性が高いわけです。
従来の与信審査について
これまでのクレジットカードの与信審査は、申込者の年収から家賃や光熱費・税金などの生活維持費やクレジットカードの年間支払予定額を差し引き、申込者が返済可能なおおよその額を利用限度額として、人の手によって設定するのが一般的でした。
つまり、年収の多い方は利用限度額を高く設定される傾向があったわけです。だからこそ、申し込みの際には年収の申告が求められてきたわけです。しかしながら、人によっては収入に合わせた生活スタイルを送る人もいて、年収が多くなった分、生活維持費も高くなる人も一定数いるため、年収だけで利用限度額を決めるのは一概に正しいとは言えない状況にありました。
例えば、高所得者であっても、クレジットヒストリー(過去のクレジットやローン契約の利用実績)が構築できていない方だと、利用限度額をそこまでたくさんもらうことはできなかったりします。年収500万円なのに利用限度額は50万円程度ということは実はありえない話ではないです。
従来の与信審査は、人の手によって利用限度額が最終的に決められていましたが、私たちが想像しているよりも適切な金額が設定されていました。そのおかげで多くの方が返済不能に陥らないようになっていたのですが、やはり、近年のクレジットカードの申込数の増加に対応するためにはAI(=人工知能)の導入が不可欠だったのでしょう。
多重債務者が増えるとの懸念も...
今回の改正割賦販売法の成立によって、懸念を抱いたのが弁護士らでした。なぜ、弁護士たちが懸念を抱いたのかというと、クレジットカードの返済が不能になり債務者となると、最終的にその相談先に選ばれるのが弁護士だからです。弁護士は常に市民の味方となる存在です。
与信審査にAIを活用することによって、平均的な利用限度額が上がる可能性があるだけでなく、AIの誤作動で通常では考えられない利用限度額を与えられる人が出てくる可能性さえあるため、それで返済不能に陥り多重債務者が増える可能性があると弁護士たちからは懸念されているのです。
正直なところ、この懸念は当然なものだと筆者も感じます。しかし、クレジットカード業界は常に最先端の技術を導入しなければならない業界でもあります。例えば、不正利用に関してもAIを導入しないと次から次へと現れる新たな不正利用に対応できなくなってくるでしょう。なので、今後もクレジットカード業界は最先端の技術の導入を急ぐはずです。
朗報なのは、契約者である私たちを守ってくれる弁護士のような心強い存在がしっかりと声をあげていることではないでしょうか。日本には素晴らしい弁護士がたくさんいますので、そういった方々が声をあげ、問題提起をすることはすごく大事なことです。
今回、弁護士たちがAIの活用に対してしっかりと懸念を表明したことでカード会社はより一層身を引き締めて今回のAI活用を議論していくことになるでしょう。なので、筆者は実はそこまで心配していません。きっとこれまで通りうまくいくはずです。
AI活用で利用限度額が上がる人が急増する理由
「AIを活用したところで利用限度額が上がるとは思えない...」という意見は当然出てくるはずです。たしかに、単にAIを活用するだけなので、これまでの与信審査と全く変化がない可能性はゼロではないでしょう。しかし、変化がある可能性のほうが今のところ高いと言えそうです。
というのは、今回の割賦販売法の改正案をよく見てみると、AI(人工知能)やビックデータを活用するため、ユーザーの元々の属性(年収など)だけでなく、過去のカードの利用履歴や返済実績などを分析して与信審査を行うことが可能になり、年収が低くても利用履歴や返済実績が優秀であると判断されれば、利用限度額が高く設定される可能性があるからです。
そうなると、年収の割に利用限度額が高すぎる、なんてことになりかねないのですが、経産省はカード会社に対してユーザーの延滞率や貸し倒れが一定におさまっているかチェックするとのことなので、カード会社としてもずさんなAIの活用はできなくなっているため、明らかにおかしな利用限度額が設定されることは殆どないと考えていいでしょう。
もちろん、AIで与信審査を行うので、稀におかしな利用限度額に設定されることはあるかもしれませんが、最終的にはこれまで通り人の手で修正することが可能なことには変わりないので、基本的にはAIを使っても適切な利用限度額が設定できるはずです。
AI活用を盛り込んだ改正法が実施されるのは2021年4月からなので、AIを活用したカード会社の与信審査は早くても2021年の春以降になるでしょう。三井住友カードやJCB、三菱UFJニコス、クレディセゾンといった大手は特に早めのAI導入が期待されます。
利用限度額が上がる人は増える?それとも減る?
これは筆者個人の意見として受け取ってもらいたいのですが、利用限度額が上がる人は増えると予想しています。先述したように今回の法改正が実施されることによって、審査の比重が人の手からAIへ移行することで、与信審査の厳しさは基本的に緩和されるとの見方が強いです。
これまでの与信審査は正直言って厳しすぎました。例えば、社会人に対して与信枠が10万円しか与えられないことがよくありますが、これは妥当だといえるでしょうか。もちろん、収入など、その方の返済能力を加味したうえで“10万円”という数字が設定されるわけですが、一般的に社会に出ている人に対して10万円しか与信枠が与えられないのは適切とは言いにくいです。
与信枠が10万円と言っても、常に10万円利用できるわけではないのです。毎月平均5万円利用する方だと、翌月の支払日に利用金額の5万円を支払うまで残りの利用可能枠は5万円しか残っていないので、この場合、毎月5万円以内でやりくりしていかなければならず大変です。
社会人にとってクレジットカード決済を毎月5万円しかできないのはキャッシュレス決済が推進されている昨今ではかなり痛手です。
ある調査によれば、独身の場合、食費は月平均40,000円、携帯料金は月平均6,600円、光熱費は月平均10,000円前後となっていましたので、これら全てをカード決済にすると月5万円を軽く超えてきますから、独身の場合、与信枠は最低でも20万円前後は欲しいところです。理想は50万円以上といったところでしょうか。
今回の法改正によって与信審査にAIが活用されることで、カードの利用履歴や返済実績などが審査で活かされることになるため、これまで少ない利用限度額に悩まされてきた中でそれでも毎月コツコツとカードを使ってきた方は今後の与信審査で利用限度額が上がる可能性が高いので、これからの動きに注視していきましょう。
利用限度額を上げる方法
改正割賦販売法の成立によって、今後、多くの方の利用限度額が上がる可能性があるのですが、与信審査は新規にクレジットカードを作るとき、もしくは、クレジットカードの更新時期に行われますので、ただ待っていても利用限度額がすぐに上がるわけではないことを知っておいてもらいたいと思います。では、利用限度額を増額させるにはどうすればいいのでしょうか。いくつか方法がありますので参考にしてみてください。
増枠申請をする
最も手っ取り早く利用限度額を増額させる方法が「増枠申請」です。増枠申請は、その名のとおり、与信枠を増やすための申請です。自らの手で申請できるため、増枠したいタイミングで申請してください。
昔は電話や書面で申請する必要がありましたが、現在では多くのカード会社でウェブ上で増枠申請が可能になっているため、気軽に申請できます。
増枠申請は審査を伴いますので、結果がわかるまである程度の時間を要します。すぐに申請に通るわけではないので、例えば、近々海外旅行を控えていてそれまでに増枠したい、なんて場合は時間に余裕をもって申請しておくことをおすすめします。
審査の結果、申請が通らない場合ももちろんあります。この場合、従来の利用限度額が維持されることになります。増枠申請に通らなかった結果、利用限度額が減らされる、ということはまずないのでそこはご安心ください。
場合によっては、収入証明書類の提出を求められることがあり、手間がかかる場合があります。ただ、収入証明書類を提出することで年収が上がっていることが確実に証明できれば増枠申請が通る可能性は高くなるので、提出を求められたら素直に提出するといいでしょう。
たとえ年収が上がっていなくても、契約年数が長く、毎月コツコツと利用している実績があれば、増枠申請が通る可能性は十分にあります。
また、“一時的に”増枠することが可能な場合も多いです。例えば、高額商品を購入したいときなどに一時的な増枠申請をすることが可能で、この場合、即日対応してくれることが多いです。一時的な増枠申請は永続的ではないため、どちらかといえばこちらのほうが申請が通りやすい傾向があります。
カードのグレードをアップする
クレジットカードにはグレードがあります。大きく分けると、一般カード→ヤングゴールドカード→ゴールドカード→プラチナカード→ブラックカードに分けることができ、この順序で審査難易度も上がっていきます。
一般的にグレードが上がるにつれて利用限度額も上がる傾向があります。例えば、A社の一般カードを作ったときは利用限度額が30万円だったのが、A社のゴールドカードに乗り換えたら利用限度額が一気に80万円にアップした、といったように...。このような事例はよくあることです。違うカード会社に乗り換えても増額する可能性は高いです。
なぜ、クレジットカードのグレードをアップすることで利用限度額も上がるのかというと、グレードの高いクレジットカードほど審査が厳しく行われるためです。つまり、そもそも属性の悪い人はグレードの高いクレジットカードを作れない、言い換えると、返済能力に長けた属性のいい人だけがグレードの高いクレジットカードを作れるため、グレードアップで利用限度額を上げることができるわけです。
クレジットカードのグレードをアップすると、還元率がアップしたり、様々な保険の補償金額やサービスの質もグレードアップしますので、クレジットカードの利用頻度が高い方はぜひグレードアップを検討してみてください。昔は高嶺の花だったゴールドカードも今や誰でも取得できる時代になってきているので気になる方は要チェックです。
余談ですが、ブラックカードに関しては利用限度額を無制限としているカード会社もあります。代表例がアメックスブラックです。正式にはアメリカン・エキスプレス・センチュリオン・カードと呼ばれており、利用限度額がないため、好きなだけショッピングに利用できます。ただ、アメックスブラックは完全招待制で、最低でも月間200〜300万円程度利用しないとインビテーション(招待)すら来ないと言われるほとんどの人にとって縁のないカードです。
クレジットヒストリーを構築する
クレジットカードの与信枠が決められるタイミングは二つあり、一つは新規にクレジットカードを申し込むタイミング、そして、もう一つがクレジットカードの有効期限を迎えるタイミングです。
どちらにも共通して言えるのですが、与信審査ではクレジットヒストリー(=クレヒス)を審査材料にすることがあるため、クレヒスを構築しておいたほうが利用限度額が高く設定される可能性があるということです。
クレジットヒストリーとは、過去のクレジットカードの利用実績を示すものです。例えば、年に1回30万円の大きな買い物をカード決済するよりも、毎月3万円を年間通してカード決済している方のほうが返済能力に長けている=クレジットヒストリーが構築できていると判断され、カード会社から高く評価される傾向があります。
クレヒスをコツコツと構築し続けることで、一番最初にクレジットカードが発行されたときに与えられた与信枠が10万円だったのが今では500万円オーバーまでアップする、なんて筆者のような経験をできる可能性もあります。
クレヒスに関しては“コツコツ”ということが何よりも大事で、利用金額は少額でもいいのでクレジットカードを毎月利用して、期日通りに返済する、これを継続していくことでいずれ実が結ばれます。
カードの更新時期を待つ
クレジットカードには有効期限が設定されています。平均3〜5年の有効期限が設定されており、例えば、「08/20」と記載されていれば、2020年8月末がそのカードの有効期限となります。
有効期限を設定するのは劣化防止や防犯対策などのほかに、有効期限を迎える前に与信審査を行う目的があります。
カード会社は、クレジットカードの有効期限を迎える前に契約者のこれまでの利用実績などをチェックし、問題が見つからなければ、新たに有効期限が設定された更新カードを契約者のもとに届けます。更新カードの発行は自動で行ってくれますので、契約者は特別に何か手続きをする必要はありません。
この更新カードの発行にあたって与信審査が行われます。契約の途中で行われる審査であるため、「途上与信」「中間審査」とも呼ばれています。
更新カードの発行にあたって行われる与信審査によって、契約者の返済能力が高いことが証明されると、現在の与信枠よりも多く枠を設定してもらえる可能性があります。一般的にそのカードの保有年数が長くなれば、与信枠もそれに伴い増えていく傾向があります。
毎月コツコツ利用し、クレジットカードの更新を継続することで、発行初年は与信枠が10万円だったものが、一度目の更新時期に50万円にアップ、二度目の更新時期に100万円にアップといったことが可能になります。
更新された内容をよく確認せずに10年以上同じクレジットカードを利用している方が稀にいて、そういう方に限って「このカード与信枠低いんだよ...」と嘆いている傾向があるので、知らずうちに与信枠がアップされていないか今一度チェックしてみるといいでしょう。
利用限度額を減枠する方法とその理由について
非常に稀なケースですが、契約者の中には「利用限度額を減枠(少なく)したい」とおっしゃる方がいます。結論から言うと、減枠することは可能です。
各カード会社のウェブサービスには、増枠申請と同様「減枠申請」の欄がありますので、そこから減枠の申請が可能になっています。ただし、多くのカード会社が増枠申請に対応しているのに対し、減枠申請に関しては対応しているカード会社が限られてくるので注意が必要です。
減枠申請が可能なカード会社の一つに「楽天カード」があります。楽天カードの場合、減枠可能なショッピングの利用可能枠は10万円を下限としていますので、既にショッピングの利用可能枠が10万円の場合はそれ以下の減枠はできないので注意が必要です。
このように減枠したくても減枠できないケースがあることを認識しておく必要があります。また、たとえ減枠申請をしても審査結果によってはご希望に添えないことがあるので、その点も注意が必要です。
一度、減枠申請に通って新しく与信枠が設定されると再度増枠したいと思ったときに新たに増枠申請・審査が必要になり、審査結果によってはご希望に添えない状況になることもあるので、この点も注意が必要です。
減枠申請をする理由の多くは、使いすぎ防止のためです。与信枠を50万円与えられたが毎月使うのはせいぜい3〜5万円程度なので30万円ほどまで減枠したい、家族カードを発行するので与信枠を減枠して家族の使いすぎを防止したい、といった理由から減枠申請をされる方が一定数います。
改正案施行後に新しいクレジットカードを作るべき?
与信審査にAIが活用される日はそう遠くない未来だと思っていいでしょう。では、それに備えて新しいクレジットカードを作るほうがいいのでしょうか。
現在、多くのクレジットカードは各カード会社のウェブサービスなどから増枠申請できるので、改正案施行後にすぐに新しいクレジットカードを作る必要はないですが、今後作ろうと思っているクレジットカードがある、メインカードの乗り換えを考えている、なんて場合は改正案施行後を狙って申し込むといいかもしれません。
筆者も実際に改正案施行後に、以前利用していて今は解約してしまったとあるクレジットカードに再度申し込んでみたいと考えています。当時の属性の今の属性は大きく異なるので、結果的には与信枠は当時よりも多く与えられることになるでしょうが、実験をかねて申し込み、その結果を発表したいと思います。
そして、改正案施行“前”にやっておいてもらいたいのは、今あるクレジットカードで使わないカードがある場合は解約することです。
例えば、10枚以上のクレジットカードを保有している方は与信枠が圧迫されている可能性が高いので、使っていないカードを解約して、与信枠に空きを作ってあげることで、次にクレジットカードを作るときにより多くの与信枠をもらえる可能性が高くなります。
クレジットカードを過剰に保有していると与信枠を圧迫する可能性だけでなく、審査そのものに悪影響を及ぼすこともありますので、不要なクレジットカードは解約して今後の審査に備えるようにするといいでしょう。
筆者のようなマニアでない限り、クレジットカードは基本的には3〜5枚程度あれば十分です。実際に十数枚以上のカードを保有している筆者でも日頃から利用しているのは3枚前後です。メイン1枚、サブ1〜2枚という体制で利用していくのが最も賢い方法です。
何よりも大事なのは計画性を持って利用すること
利用限度額が上がるのはとても喜ばしいことです。例えば、今まで10万円しか利用限度額が与えられなかった方はクレジットカードを使った日々の買い物にすごく困っていたはずです。ほとんどの支出をクレジットカードにまとめたいのであれば、10万円という枠は少なずぎます。
実際に10万円の枠が与えられても、先月に限度額いっぱいとなる10万円を利用してしまったら、翌月の支払日に10万円が引き落とされるまで枠は回復しないため、それまでクレジットカードが利用できない状態になってしまいます。これではクレジットカードの強みを全く活かせません。毎月10万円利用する方なら、最低でも20〜30万円ほどの与信枠が欲しいところです。
与信審査のAI活用によって利用限度額が上がる可能性は誰にもあります。しかし、何よりも大事なのは計画性を持って利用することです。利用限度額が上がることでこれまでよりも頻繁にクレジットカードを利用する方が必ず出てくるはずです。
そうなると困るのは支払いです。給料が大幅に上がったわけではないのに利用限度額が上がったせいで使いすぎ、そして、返済に困ってしまう、なんてことになる方が必ず一定数は出てきますので、利用限度額が上がった際には十分に気をつけなければなりません。
利用限度額が上がったことでタガが外れたかのように利用してしまわないようにしてください。「私は大丈夫」と思っている方ほど実は危ないです。実際に筆者の周りにもクレジットカードの返済に困った方がいて相談を受けたことが何度かあります。そういう方ほど「自分は大丈夫」という精神でクレジットカードを使っていました。
逆に筆者の経験上から「こんなに利用限度額をたくさんもらって大丈夫かな...」「枠が大きすぎるから減枠申請でもしようかな...」と心配性な方ほど慎重になるため、返済に困らず、計画的に利用できている傾向があります。
皆さんも、今後、利用限度額が上がった際には一瞬だけ喜ぶのはいいですが、それで調子に乗って使いすぎて返済に困るような状況に追い込まれないようにしてください。
返済の遅延は信用情報を傷つけ、今後、クレジットカードの審査やローン契約の審査に落ちやすくなる可能性があるので十分に注意しなければなりません。「計画性」という言葉を常に心のどこかに留めておくようにしましょう。