2011年の東日本大震災を皮切りに、2014年の御嶽山噴火、2016年の熊本地震、2017年の九州北部豪雨、2018年の西日本豪雨、北海道胆振東部地震といったように、日本で住むうえで自然災害は避けられません。
例えば、大地震が発生し、自宅倒壊の恐れ、津波警報が出た場合、着の身着のままで避難しなければならず、財布を自宅に忘れてしまう可能性があります。財布の中には現金をはじめ、身分証明書、キャッシュカード、クレジットカードが入っていたはずです。失うとすべて困るものですが、筆者はこの中で“クレジットカード”の存在意義が強いと感じています。
現金は諦めがつきますし、身分証明書やキャッシュカードは罹災証明書などを用いて再発行が可能です。クレジットカードは他とは違い、様々な手続きが必要になります。その一方で役立つ一面もありますので、今回はクレジットカードと災害の関係性をみていくことにしましょう。
- 目次 -
自然災害時にすべきクレジットカードの手続き
自然災害時にクレジットカードが自動的に利用停止してくれれば、様々なトラブルを予防できますが、実際にはそのような機能はありません。すべて自分の責任になるわけではないですが、あなたがクレジットカードの保有者である以上、自分で責任をもって各種手続きしなければなりません。では、どのような場合に手続きが必要になるのでしょうか。ケース別にみていきましょう。
クレジットカードを紛失した場合
自然災害時に起こり得る事例でまず考えられるのが、紛失です。紛失とはクレジットカードをなくし、探しても見つからない状況をいいます。自宅に財布を忘れてしまって見つけられない、自宅が倒壊したので取りにいけないなど、手元に戻ってこないと想定できる場合は紛失と認識して構いません。
クレジットカードを紛失した場合、カード会社に紛失届を出す必要があります。ウェブサービスから紛失届を出せる場合がありますが、自然災害時は通信環境が整わずにウェブサービスを使えないことがあるので、電話で紛失届を出すのが確実でおすすめです。カード会社は自然災害時用のマニュアルを作っていますので、事情を理解して丁寧に手続きをしてくれますので、その点は安心してください。
紛失届を出す場合、会員番号(14〜16桁のカード番号)をはじめ、氏名、生年月日、引き落とし先の銀行と支店名、住所、電話番号の申告が必要になる場合がありますので、メモしておくことをおすすめします。メモアプリ(スマートフォンにはロックをかけることを推奨)や災害用の防災バッグの中にメモを入れておくことをおすすめします。
紛失届を出すと再発行手続きが可能になります。もし自宅が倒壊して自宅住所で新しいカードが受け取れない場合、カード会社によっては勤務先住所へ送付してくれる場合がありますので、その旨を伝えてカード会社と送付先について相談しましょう。
再発行の必要がない場合は、解約しても構いませんが、クレジットカードは最低1枚は保有しておきたいので、保有しているすべてのクレジットカードを解約することはおすすめしません。どんな事情であれ、職を失うと無職の扱いとなり、新規のカード審査に通らなくなる可能性があるからです。自然災害への備えとして、固定費のかからない年会費無料のカードを1枚作っておくのがおすすめです。
諸事情で支払い(返済)が遅れる場合
大きな自然災害に見舞われた方は、ご自身の状況が大きく変わってしまう恐れがあります。例えば、バイト先が冠水して営業ができなくなり、しばらく出勤できず、お給料をもらえない状態になってしまったケース。こういうケースでも、家賃や光熱費、食費など月々の出費がなくなるわけではないので、支払いに追われてしまい、返済が難しくなる場合があります。
クレジットカード決済において、自然災害などを理由に支払い(返済)が遅れる場合、引き落とし日の前に(理想は事態を把握したらなるべく早めに)クレジットカード会社に連絡することが大事です。支払いを逃れることはできませんが、事情を先に説明しておくことで被災者対応となる場合があり、延滞による催促を先延ばしにしてくれることがあります。ドライなイメージが強いカード会社ですが、自然災害時は意外にも柔軟に対応してくれるので、そういったときにクレジットカードを持っていて良かったと実感するものです。
また、自然災害時はカード会社自身が「特別対応窓口」を設ける場合があります。例えば、分割払いの返済が残っていたりすると、利息の一時的な猶予や遅延損害金なしの返済猶予といった措置がとられる場合があるので、自然災害時はカード会社と支払い(返済)についてしっかりと相談することをおすすめします。親身に対応してくれますので、なるべく早めに相談しましょう。
不正利用された場合
自然災害は、ときに予期せぬ事態を引き起こします。特に私達が心に留めておきたいのは、災害時は一時的に治安が不安定になる可能性があるということです。「日本は平和だから大丈夫でしょ?」と思うかもしれませんが、東日本大震災のときには窃盗や詐欺、闇金が横行していました。いくら治安のいい日本でも100%他人を信頼することはできないのです。
中には、クレジットカードを盗んで悪用する人もいるかもしれません。カードの悪用は不正利用の対象となりますので、カード会社と警察署に連絡する必要があります。不正利用に関しては、補償されますが、連絡を怠ると不正利用に対する対策の甘さを指摘され、補償が適用されない場合がありますので、なるべく早めに関係各所に連絡するようにしましょう。
注意したい点が2つあります。1つ目は、不正利用の記録です。近年、不正利用を自ら装って代金を搾取する事例が多くなっているそうなので、不正利用された場合は詳細を記録しておくなど証拠を残すことが大事です。多くのクレジットカードはウェブサービスで利用明細をいつでも確認できるようになっているため、災害発生後は身に覚えのない利用or請求がないか頻繁にチェックしましょう。
2つ目は、暗証番号を絶対に知られないようにすることです。暗証番号は本人にしか知り得ない情報であるため、不正利用された場合でも暗証番号が入力されたことが確認されると契約者に落ち度があると判断されてしまい、支払責任を追わなければならない場合があります。暗証番号は基本的にメモはせず、記憶の中に留めておくことが大事になってきます。ただし、誕生日など特定しやすい番号は避けましょう。
災害時の不正利用の対策としては、先述したように、クレジットカードを紛失してしまった場合は紛失届を出して、元のカードを利用停止にし、カードの再発行または解約することになります。契約者として保有するクレジットカード一枚一枚をしっかりと管理することが求められてきます。
備考:不正利用が適用されないケースとは?
全く身に覚えがない不正利用に対しては補償されるケースが多いです。ただし、こんな場合は注意が必要です。「被災時に避難先で現金がない友人にクレジットカードを貸したはいいが、あとで明細書をみて、事前に了承していた代金よりも多く使用されていた、それなのにその後連絡がとれないので不正利用として処理してもらいたい」といったケース。残念ながら実はこういうケースでは不正利用が適用されない可能性が高いです。
まず、クレジットカードを他人に貸すことは「名義貸し」という行為になり、多くのカード会社は約款で名義貸しを禁止しています。加えて、友人は名義人の同意を得てクレジットカードを借りたことになるうえ、その事実を知る由もない購入先(販売店)は第三者として保護されるので、基本的には名義人であるあなたに購入代金を支払う義務が生じてきます。
ただし、その友人は詐欺罪に当たる可能性がありますので、訴訟を起こすことは可能でしょう。しかし、現実的に考えると、自らも被災しており、訴訟を行う余裕がないことを考えると、このような事態は避けたいところで、最も効果的な対策方法はクレジットカードをむやみに他人に渡さないことといえます。
名義貸しではなく、代行のような形で、友人と一緒にネットショッピングを利用し、あなた自身がカード決済し、その時点で代金を受け取るようにすれば、今回のようなケースにならずに済みます。被災時には様々なケースを想定し、なるべく自分のことは自分で解決できるようにしたいものです。
引越しをした場合
被災された方の中には、引越しを余儀なくされる方もいるでしょう。被災による引越しは何かと手続きが多く、どうしてもクレジットカードの手続きを忘れてしまいがちですが、住民票の移動を伴う引越しをする場合は、カード会社に引越しをした旨を届け出する必要があります。ただし、体育館などへの一時的な避難の場合は、そこが住所になるわけではないので、この場合は届け出しなくても大丈夫です。もし一時的な避難と更新カードの発送時期が被る場合は、その旨をカード会社に連絡しましょう。
近年はカード会社が提供するウェブサービスから住所変更手続きができる場合が多いので、通信環境が整っていればウェブサービスから手続きをしても構いません。電話でも住所変更手続きが可能なので、相談なども含めてカード会社へ連絡したい場合は電話を選ぶといいでしょう。
そもそも、なぜクレジットカードの引越しに関する手続きが必要なのでしょうか。これはクレジットカードの「有効期限」が大きく関係しています。通常、クレジットカードには5年前後の有効期限が設定され、有効期限を迎える前に更新カードが届けられ、また5年前後の有効期限が設定されます。有効期限が必要な理由の一つはカードの劣化を防ぐためです。また、クレジットカード犯罪は年々巧妙化しており、それに伴い、カードのセキュリティも進歩しています。最新のカードを届けることによってクレジットカード犯罪を防ぐ目的もあります。
そして、もう一つ、「途上審査」を行う必要があります。途上審査とは、クレジットカードを作ってから行われる審査のことで、過去の利用実績に問題がないかをチェックし(返済の遅延回数が多いと強制解約されるケースもあり)、問題がなければ、更新カードが発送されるようになっています。クレジットカードを作ってからも審査はあるので、今後もカードを使うために私達は計画的に利用しなければなりません。
備考:避難先で荷物を受け取る方法or送る方法
被災時にネットショッピングを利用した際、受け取りに困ることがあるかもしれません。住所を自宅に設定していても、自宅が倒壊の恐れがあったり、避難勧告が出ていたりして、自分自身が自宅にいないことが続くと自宅で受け取ることは難しくなってきます。時間指定をしていてその間だけ待つのも大変でしょうから、できれば避けたいところです。
では、避難先で荷物を受け取ることは可能なのでしょうか。結論からいえば、可能です。ただし、被災時は道路状況や環境などを理由に荷物の受託および配達が中止される可能性があります。郵便局だとゆうパックをはじめ、ゆうメール、ゆうパケットといった郵便物の受託は停止となる可能性があります。
ただ、普通郵便であれば、被災地にも届けられます。このとき、万が一に備え、追跡情報をつけてもらうことをおすすめします。「特定記録」「簡易書留」「一般書留」といった方法を選択してもらえば、追跡が可能で、郵便物の行方をチェックすることができます。
ゆうパックやゆうメール、ゆうパケットといった郵便物が避難先で受け取れるようになってからは、送り主に以下のことを注意してもらいましょう。特に注意が必要なのは、避難先の住所の書き方です。避難所に荷物を送る場合は、住所欄に避難所の住所と避難所名(気付)、住所(自宅)を記入します。
例:避難先のA小学校へ荷物を送る場合の住所欄の書き方
○○県○○市1-2-3 ○○小学校体育館 気付○○県○○市3-4-5 ○○マンション ○○○号室(自宅)
最寄りに郵便局がある場合は、郵便局留めで受け取ることも可能です。郵便物が徒歩圏内であれば、こちらのほうが確実に荷物を受け取ることができるかもしれません。郵便局留めで荷物を送ってもらう場合は、実は郵便局の詳細な住所は不要で、○○県○○市○○郵便局 局留でOKで、上記のように住所(自宅)も記入してもらいましょう。
伝票には電話番号の記入欄がありますが、電話番号は確実に連絡がとれる番号を記入しておいたほうがいいです。例えば、体育館のような広い避難先を荷物の受け取り場所に設定した場合、配達員が体育館の入り口まできて受取人に電話をかけることがあり、このとき受取人が電話に出られないと配達員は荷物を持ち帰り再配達になってしまうからです。
失業・転職をした場合
被災し、失業や転職に迫られる方は少なくありません。失業時と転職時は属性に変化があるので届け出したほうがカード会社としては助かりますが、強制でないこと、失業したとしてすぐに転職する可能性があること、などを考慮すれば、無理に届け出する必要はないです。カード会社としては期日通りに返済してくれれば困ることはないので、返済が通常通り行われていれば、失業or転職したかどうかを尋ねてくることはありません。
ただし、失業時期が1年以上と長くなることが予想される場合には届け出したほうがいいかもしれません。クレジットカードには途上審査があり、無収入になったことで支払いの遅延を何度も引き起こしたりするようになると強制解約されることがあります。ただし、無収入になっても毎月しっかりと返済できていることがわかれば、強制解約されないので、やはり、無理に届け出する必要はありません。
一方、転職によって属性(雇用形態や収入)が良くなった場合は、届け出してもいいでしょう。カード会社Aに一般カードとゴールドカードなどのステータスカードがある場合、属性がよくなることでより難易度の高いカードを狙えるようになります。また、一般カードを毎月ある程度の金額使って滞りなく返済できていると、ゴールドカードなどのステータスカードへのランクアップのお知らせが来る場合があります。
自然災害時のクレジットカードの意外な活用法
「災害時はクレジットカードが使えないから結局は現金が強い」←これは事実なので否定する気は一切ありません。停電すると電気が使えないわけですから、電力に依存するクレジットカード決済(電子決済)が役に立たない場合があるのは事実です。
ただ、現代では災害時でも早ければ数時間、遅くとも数日で電力は復旧するので、災害後の生活を考えれば、クレジットカードを上手に活用する方法を覚えておいたほうがいざというときに焦らずに行動ができます。いくつかの便利な活用法を紹介しますので参考にしてみてください。
キャッシングで現金を確保
「キャッシング」をご存知でしょうか。キャッシングは現金を借り入れる機能のことで、口座残高がなくても現金を確保することができるので、被災時などいざというとき役立ちます。
「キャッシングはお金の管理ができない人が使うものだ!」とおっしゃる方がいますが、そういった傾向があるのは事実なので否定はできませんが、災害時に使えるテクニック・活用法であることには間違いないので覚えておいて損はないです。(参照:キャッシングの詳しい解説)
実は多くの方のクレジットカードにすでにキャッシングが付帯している可能性があります。あなたのクレジットカードでキャッシングができるかどうかチェックする簡単な方法は、カード送付時にカードが貼り付けられていた台紙にキャッシングの利用可能枠が記載してあるかどうかを確認すること。キャッシングの利用可能枠が記載してあれば、お持ちのクレジットカードでキャッシングが利用できます。
カードの申込時にご自身でキャッシングを付帯させるかどうか決められる場合や、カード会社が勝手に付帯させる場合があります。後から申し込みをして付帯することもできるので、災害に備えたい方はキャッシングの申し込みをしておくといいでしょう。なお、キャッシングはカード審査とは別に審査が必要になります。
キャッシングは、大手コンビニのATMをはじめ、ゆうちょ銀行やイオン銀行ATM、その他提携ATMやCDで利用できます。利用方法は思いの外シンプルです。ATMやCDにクレジットカードを入れて、「お借り入れ」→「暗証番号」→「キャッシング1回払い」→「ご利用金額」→「現金と明細票受け取り」、大まかですが大体は手順でキャッシングを利用できますので覚えておきましょう。
返済方法は1回払いとリボ払いが選べますが、リボ払いは月々の返済額を抑える代わりに利息をプラスして返済していくことになり、返済総額が増えるのでおすすめできません。キャッシングは基本的に非常時に使いたい機能なので、1回払いで返済できる金額に留めておきましょう。
付帯保険+オプション保険で補償を受ける
クレジットカードに様々な保険が付帯されていることを知らない方は多いようです。例えば、紛失・盗難保険はどのクレジットカードにも自動付帯しています。盗難されて不正利用された場合でも、紛失・盗難保険が自動付帯されているため、不正利用された金額分はきちんと補償してもらえるのです。
災害時は一時的に治安が不安定になる場合があり、クレジットカードを盗難されないとは言い切れないので、多額の現金を持つよりもクレジットカードを持っていたほうが安心といえるでしょう。
ただ、現時点では、自然災害時に適用される保険は少ないのが実情です。死亡保険はありますが、基本的に国内・海外旅行傷害保険に該当する保険となり、自然災害では機能しないことがほとんどです。ちなみに、国内・海外旅行傷害保険が付帯されていると、旅行時の怪我や携行品の破損なども補償してもらえます。旅行傷害保険については、年会費無料カードの場合は自動付帯ではなく利用付帯(旅行の際に交通機関でクレジットカードを使う条件で保険が適用される)の場合が多いので、その点にも注意しなければなりません。
ここで一点覚えておきたいのは、「オプション保険」の存在です。カードによってはオプション、つまり追加料金を払うことで保険を手厚くすることができる場合があります。オプション保険には色々な種類があって、火災や台風や洪水、落雷などの自然災害時の補償を行うものがありますので、自然災害にしっかりと備えたい場合は、これらのオプション保険に加入することをおすすめします。ただし、オプション保険を用意していないカードも多いので、加入前にオプションがあるか否かチェックしておく必要があります。
有名どころでいえば、三井住友カードが提供している「ポケット保険」がオプション保険となります。ポケット保険は三井住友カード会員限定の保険で、傷害死亡や後遺障害の補償をはじめ、火災でソファーが燃えた、落雷でテレビが壊れた、台風で窓が割れて家具が水浸しになった、留守宅に強盗が入り貴金属を盗まれた、といった事例に対して補償するような内容で保険を組むことができます。月々数百円程度で加入できます。
スマホにカード情報を登録して電子マネーを活用
先述したように、自然災害が発生すると一時的に停電に見舞われますが、遅くとも数日経過すれば、電力は復旧するので、クレジットカードは徐々に使えるようになってきます。それでも、復旧までの数日間をどう過ごすかは重要です。お店によっては災害時にクレジットカード決済を断られることもあるので、現金はいくらか用意しておきたいですが、電力が復旧すれば、電子マネーが使える可能性が出てきます。
iPhoneの方は、スマホにクレジットカードを登録することで「Apple Pay」(Androidの方はGoogle Pay)を利用できます。Apple Payはチャージが必要なSuicaと、チャージが不要な電子マネーiDとQUICPayを利用できますので、Apple Payのみで様々な場所で買い物が可能になります。スマホひとつで決済できるようになるため、災害時など混み合うシーンでも数秒で決済でき、お店側としても助かります。
ただ、問題点が残るのも事実です。まずスマホのバッテリーはどうするか。近年は災害時に自治体がスマホの充電所を設置することが多くなってきていますが、必ず混み合います。そういった事態に備え、SONYの手回し充電器「CP-A2LAKS」のようなアイテムを準備しておくことをおすすめします。CP-A2LAKSはバッテリー容量4,000mAhで、3分間の手回しで約1分間の通話、5分間で約1分間のウェブブラウジングが可能になるので、非常に便利です。災害が発生するとこういった便利アイテムは即座に売り切れてしまうので、購入できるときに購入しておきたいものです。
自然災害とモバイル決済の今後の展望
私達は自然災害に備え、様々な準備をしなければなりません。例えば、地震への備えとして、ご自宅では家具の固定、懐中電灯やホイッスルの準備、避難指示・避難勧告が出ることに備えて現金や防災バッグの準備、避難場所や避難経路の確認といったことが個人でできます。災害発生時の情報確認のために、首相官邸や総務省消防庁、防衛省、内閣府防災、気象庁などのSNSアカウントをフォローしておくのもおすすめです。
自然災害時に特に起こりやすいのが「停電」です。地震・豪雨・台風、様々な自然災害の発生時に停電は起こります。停電で困ることはいくつもありますが、そのひとつにモバイル決済ができなくなってしまうことが挙げられます。例えば、コンビニが停電すると電子マネー決済ができなくなるので、いくらかの現金は必要になってきます。たとえ電力が復旧しても電子決済の復旧自体に時間がかかることもあるので、このあたりはモバイル決済の課題として残っています。
電子マネーは停電時に一時的に無力になりますが、「QRコード決済」が普及すれば、その事態も解消できるかもしれません。QRコード決済とは、QRコードをモバイル端末で読み取って、事前にモバイル端末に登録したクレジットカードや電子マネーで決済することをいいます。停電時に備え、お店側が事前に印刷したQRコードをレジに貼り付けておくだけで利用者がQRコードを読み取れば決済できるので災害大国の日本では普及する可能性が高いです。実際、中国では印刷されたQRコードがレジに貼っているお店が多くあり、QRコード決済はかなり普及しています。
ここで、「QRコードが表示できても、停電してるわけだからお店側で決済処理できないのでは?」という疑問が生じてきます。実は、充電可能なモバイル決済端末(例:クレピコ)が登場しており、これをお店側が導入すれば、停電時でもQRコード決済だけでなく、電子マネー決済、カード決済ができるようになります。今後の展望として、お店側で充電可能なモバイル決済端末の導入率が高くなれば、自然災害時でも多額の現金を用意する必要がなくなるかもしれません。
自然災害時は治安が一時的に不安定になることがあるので、多額の現金を持ち歩くことはなるべく避けたいものです。自然災害に備え、高額紙幣を用意している方がいると思いますが、お釣りがないなどを理由に高額紙幣の使用を断られることもあります。これらの事情を考慮すれば、関係各所との連携がもっと深まれば、自然災害は現金よりもクレジットカードのほうが役立つ時代がくるかもしれません。