2018年頃から注目を浴びはじめたQRコード決済(スマホ決済)ですが、2020年はさらに注目を浴びることとなるでしょう。2020年時点での王者といえば、「PayPay」の名が間違いなく上がってくるはずです。QRコード決済=PayPayというイメージもあるぐらい、PayPayの認知は広まっています。
そもそもQRコード決済が注目を浴びたのは“還元率の高さ”からでした。特にPayPayぶ関しては、数十%を超える還元キャンペーンを実施するなど、QRコード決済サービスの中でも驚きの高還元率キャンペーンを実施することで知られています。
還元率の高さで注目されてきたPayPayですが、この度、還元率が0.5%に改悪してしまうことが発表されてしまったのです。そこで今回は、PayPayの還元率の変動の歴史と今後の動向について解説していきます。現在、PayPayを利用している方はもちろんのこと、これからPayPayを使おうと考えていた方も注目です。
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PayPayとは
PayPay(ペイペイ)は、ソフトバンク株式会社とヤフー株式会社の共同出資により誕生したQRコード決済(スマホ決済)です。年会費や入会金、その他維持費など利用料金はかからず、スマホにPayPayアプリをインストールするだけで誰でも利用できることから多くのユーザーに愛用されています。
一般的なQRコード決済サービスと同様、チャージ型のQRコード決済となっており、クレジットカードや銀行口座、セブン銀行ATM、ヤフオクの売上金などからチャージした金額分のみを決済に利用することができます。
ちなみに、クレジットカードでチャージポイントが付与されるのはPayPayカードに限られているため、PayPayユーザーはPayPayカードを作成される方が多いです。
使い方はとても簡単で、店頭に設置されたQRコード決済を読み取る、もしくは、スマホに表示されたバーコードを見せて店舗側が読み取る、この2つのどちらかの方法で決済を行います。どちらかといえば、後者のほうがスムーズに決済を済ませられます。
次に最低限知っておきたいPayPayのメリットとデメリットを見てみましょう。
PayPayのメリット
PayPayはとにかくメリットが多いです。最大のメリットといえるのが高還元率キャンペーンを頻繁に実施しているため、他のQRコード決済に比べてポイントが貯まりやすいことです。20%・40%といった通常では考えられないようなポイント還元キャンペーンを行ったこともあり、今後もそのようなキャンペーンが実施される可能性が高いです。
また、これまでキャッシュレス決済といえばクレジットカードが必要になることが多かったですが、PayPayは銀行口座やセブン銀行ATMなどからチャージできるため、クレジットカードは必ずしも必要ではなくなりました。これにより、クレジットカードを作れない層でも手軽にキャッシュレス決済ができるようになりました。
さらに、他のQRコード決済と比べて利用できる店舗が圧倒的に多いのも大きなメリットとなっています。ICT総研の「2020年1月 QRコード決済の利用可能店舗数に関する調査」によれば、全国100地点における利用店舗可能数ですべての地点でPayPayがトップとなっていました。
例えば、東京都新宿のPayPayの利用可能店舗数は、LINE Payの約4倍、d払いの約5.4倍、楽天ペイの約12.6倍となっていました。QRコード決済にとって最も大事なのは利用可能店舗数と言っても過言ではないので、幅広いシーンで使えることは非常に大きなメリットとなってきます。
他にも、補償制度がしっかりと整っていたり、アプリの操作性が良かったり、期間限定で決済手数料を負担し店舗側の導入負担を減らしてくれるなどのメリットもあり、ユーザーだけでなく事業者側からも定評となっています。
PayPayのデメリット
PayPayのデメリットは実は意外と少ないです。デメリットを強いてあげるとしたら、クレジットカードでチャージポイントがもらえるのがヤフーカード(現PayPayカード)に限られる点ぐらいでしょう。クレジットカードからのチャージは楽チンなので、PayPayカード以外も適用してほしかったところです。
ヤフーカード(現PayPayカード)は“ヤフー”というネーミングからも想像できるように、実はヤフーの連結子会社であるワイジェイカード株式会社が発行しているクレジットカードです。PayPayはソフトバンクとヤフーの共同出資によって誕生したQRコード決済なので、優遇されているのはなんとなく納得できますよね。自社のクレジットカードを利用してもらうための仕組みでもあるのです。
また、還元率が変動しやすい点もデメリットといえるかもしれません。これはキャッシュレス決済サービス全般に言えることでPayPayに限った話ではないのですが、サービス開始当初の還元率をキープすることはさすがのPayPayでも難しかったようで、ついに改悪の運びとなってしまいました。
今回の本題である還元率の変動については次章で詳しく解説していますので引き続きご覧ください。
PayPayの還元率の変動の歴史
「PayPayは還元率がいい」というイメージがあると思います。実際、PayPayは還元率の良さからここまで人気になったと言っても過言ではありません。しかし、実際はPayPayの還元率はこの半年で大きく変動してしまいました。
PayPayは、2019年9月30日まではリアル店舗での支払いで3.0%のポイント還元を受けられました。そして、2019年10月からは還元率が1.5%に半減し、2020年4月1日より通常還元率が0.5%に改悪することが発表されました。(参照:プレスリリース)
変動の歴史を見てみると、3.0%→1.5%→0.5%と下がっており、サービス開始当初の6分の1まで還元率が下がってしまったことになります。たった半年でここまで急激に改悪することは多くの方が予想できなかったはずです。
この改悪の発表を耳にして「PayPayもついに終わった」「他のQRコード決済に乗り換えよう」という予想通りの声がある中で「現金決済に戻そうかな」なんて声があがったのは意外でした。
ただ、今回の発表で多くの方が見逃していることが一つあります。それは、2020年4月1日より変更となるのは通常還元率が0.5%となる、かつ、「PayPayボーナス付与率」というものが加わることです。
「PayPayボーナス付与率」は、前月の100円以上の決済回数が50回以上/月で+0.5%、前月の決済金額が10万円以上/月で+0.5%となるもので、実は最大1.5%という数字自体は維持しているのです。還元額の上限は7,500円/回、15,000円/月となっています。
とはいえ、1ヶ月の間に50回以上の決済が可能かと言われると、あまり現実的とは言えないですよね。1日に平均1.66回はPayPayを利用しないといけない計算なので、PayPayを毎日確実に利用する方でないとこの条件はクリアできません。
また、月10万円以上という数字もなかなかクリアするのは難しい条件です。ひと月を30日とすると1日あたり3,333円の利用が求められますので、毎月10万円以上の支出がある方でも、その支出のすべてPayPayで行うのはとても現実的ではありません。
となると、最大1.5%の還元率を受けられる人はほとんどいないということになりますので、この数字は見掛け倒しであまり意味のないものになってしまいます。
ついにPayPayも殿様経営がはじまってしまった、ということなのでしょうか...。次章ではPayPayの還元率の改悪に理由に迫っていきます。
PayPayの還元率が改悪した理由
PayPayの還元率はこの半年で3.0%→1.5%→0.5%と6分の1まで改悪することになってしまったわけですが、これは必然的な流れだったと筆者は感じています。筆者だけでなく、キャッシュレス決済に詳しい愛好家たちは実はこの動きを予想していました。
PayPayが還元率を改悪させる理由は、このままでは赤字経営が続くと判断されたためです。というのも、2019年3月の決算公告によれば、当期利益はなんとマイナス367億円と莫大な赤字を記録していました。
当期利益はプラスであることが理想ですが、大きくマイナスとなっていますから、これって実はかなりヤバいんです。一般的な企業であれば、すぐにサービスを廃止してしまってもおかしくないレベルです。経営をなんとか維持できているのは、ソフトバンクとヤフーという国内有数の大企業が親会社であるからと言っても過言ではありません。
PayPayが赤字となっているのは還元率の高さが明らかな原因(=ユーザーに還元ばかりしていて会社としての利益が出ない)ですから、そこを見直す(=還元率を改悪して赤字を減らす)ことは会社としては当然のことをしたまで、というわけです。
また、通常は店舗から決済手数料や入金手数料といった手数料収入を得るのが運営側のやり口なのですが、PayPayはサービス開始から期間限定で(決済手数料は2021年9月30日まで、入金手数料は2020年6月30日まで)無料という大盤振る舞いをしていて、実はその点も収益が上がらない一因となっていました。
しかしながら、様々な手数料を無料としたことでPayPayは他を勝る加盟店数を確保することができたのも事実で、これに関してはPayPay側も後悔していないはずです。利益は後からついてくるものだとという考えのもと、初期投資にお金をかけたわけです。
今後、PayPayの還元率はクレジットカード並まで下がり(既に下がっています)、手数料収入をしっかりと得られるようになれば、利益もそのうちプラスになっていくことでしょう。
多くのPayPay加盟店は決済手数料や入金手数料が発生することになっても、おそらく、すぐさま解約することはないはずです。既に多くのユーザーがPayPayを利用しているわけですから、急に解約するとお店側の集客力が下がってしまう可能性があるからです。そう考えると初期投資に莫大なお金をかけたPayPayの戦略は成功だったといえるではないでしょうか。
高還元率サービスはやがて限界を迎えるもの
「どの決済サービスも結局は還元率が悪くなるものなんだ...」と落胆されている方は多いはずです。筆者も昔はそのように思っていて、怒りさえ感じました。でも、いま一度よく考えてもらいたいのです。PayPayのように便利なサービスを無料で使わせてもらっているのに、そのうえポイント還元まで受けられ、それでもまだ文句を言うのは少し違うと思いませんか。
QRコード決済をはじめ、クレジットカードや電子マネーといったキャッシュレス決済は非常に便利なものです。その便利なものを利用するには莫大な設備投資が必要であり、環境の整った中でキャッシュレス決済を“無料”で利用できているわけですから、本来は無料で利用できることに感謝すべきなのかもしれません。
運営側があえて高還元率サービスを実施するのは、ユーザーをたくさん確保して加盟店を増やし、利用しやすい環境を作るためです。実際、高還元率に惹かれるユーザーはとても多いです。利用者が少なければその決済サービスは淘汰されますが、利用者が増えればその決済サービスは生活に欠かせないものになってきます。
今回話題に取り上げたPayPayなんかはまさに生活に必要なQRコード決済になってきていますよね。高還元率を売りにユーザーがたくさん集まってきた結果です。
いちユーザーとして知っておきたいのは、高還元率サービスは必ず限界を迎えるものだということです。運営には莫大なコストがかかり、そのコストを回収するためにはあらゆるところから収入を得る必要があるわけですから、高還元率を維持することは並大抵ではないのです。
高還元率をずっと維持することは、お金をずっとばらまいているのと一緒で、これでは経営は必ず傾いてしまいます。この事実をユーザーとして認識することができれば、還元率が改悪することも納得できるようになるはずです。便利なツールをこれからも使うために還元率の改悪は仕方ない、そう思うしかないのです。
PayPayの場合、最初にお金をたくさんばらまいて(=莫大な初期投資をして利用しやすい環境を作るのが目的)、それが結果的に多くのユーザーを確保するきっかけとなりました。今後はクレジットカード並の平均的な還元率となりますが、それでも利用できる店舗はとても多いので、便利な決済ツールであることには何ら変わりないわけです。ユーザーは還元率が改悪したことで騙されたと感じるのではなく、これからもその利便性に感謝して利用していきたいものです。
QRコード決済の中ではPayPayは今後も王者
今回はPayPayの改悪について詳しく解説してきました。ここまで見ていただいた方の中で「PayPayを使うのはもうやめよう」と感じた方がいるかもしれません。還元率の改悪というものはそれぐらいのインパクトがあることです。
しかし、QRコード決済の中でPayPayが王者であるという位置づけは今後も変わらない、と筆者は予想しているので、別に乗り換える必要もないと感じています。
先述したように、PayPayは利用可能な店舗数が他に比べて圧倒的に多いです。大手チェーン店はもちろんのこと、小規模店舗でも使えるのが実は大きなメリットです。むしろ、小規模店舗ほどPayPayの導入に積極的になっている印象さえ受けます。クレジットカードや電子マネーは使えないのにPayPayだけ使える、なんてお店も実際増えています。関係者によれば、PayPayの営業担当者さんがかなり頑張って加盟店を増やしているそうです。
現金決済が主流だったシーンでPayPayが利用できるようになるということは、これまでポイント還元を受けられなかったシーンでポイント還元を受けられるようになる、ということなので、それだけでお得感を感じられるわけです。お店が独自に発行しているポイントカードでポイントを貯めるぐらいなら、PayPayでポイントを貯めたほうが圧倒的にお得です。
PayPayの通常還元率は下がってしまいましたが、今後も高還元率キャンペーンを頻繁に実施するはずなので、上手に活用すればお得なのは変わりません。毎月のように何らかの高還元率キャンペーンが実施されていますので、キャンペーン情報はしっかりとチェックしておきたいものです。キャンペーンを上手に活用すれば、今回の還元率改悪の影響はあまり大きく感じないかもしれません。
また、PayPayは他に比べて補償制度もしっかりとしています。不正利用に対して全額補償してくれます。ただし、損害発生日から60日以内に申請すること、警察への被害届を出していること、家族や同居人の利用ではないこと、などの補償条件がありますので、事前に補償の適用条件はしっかりとチェックしておきましょう。
利用しやすい環境に不正利用に対して万全の対策、これこそPayPayが王者で居続けられる理由です。他サービスがあっと驚かせるような施策をとらない限り、今後もPayPayは覇権を握り続けるでしょう。
現金決済には戻るべからず
今回のPayPayの改悪によって「現金決済に戻るかもしれない」とおっしゃる方は結構多かったですが、筆者はそれだけでは声を大にしておすすめしません。
たしかに現金決済にもメリットはあります。現金決済ができないお店はほとんどない(※近年はキャッシュレス専用店舗も登場しています)ので、現金であれば支払いに困ることはないですし、実際にお金を使うという行為のおかげで使いすぎの予防にもなるでしょう。
ただ、現金の場合、銀行からお金を下ろすのにATM手数料がかかったり(例:1回110円の手数料×月3回=年間3,960円)、そもそも銀行に出向くのが面倒だったり、紛失・盗難に遭った場合に補償されなかったり、デメリットも多く存在します。
その点、QRコード決済にはデメリットが少ないです。現金決済とは異なり、ATMでお金を引き出す必要がなくなるので手数料でムダをしないですし、不正利用に対しては補償制度が用意されているので、むしろ安心して使うことができます。
そして、なんと言っても決済スピードがまるで違います。当サイトで検証した「現金とキャッシュレス決済(クレカ/電子マネー/QRコード)の1日の決済時間を比較検証」では、現金決済とQRコード決済では1日に30秒も差が出ることがわかりました。1日30秒というと差が少ないと感じるかもしれませんが、1年で考えると30秒×365日=182.5分=約3時間の差となるので、かなりの時間短縮となります。
また、現金でのやり取りを交わさずに済むため、2020年に流行したコロナウイルスのような流行ウイルスを予防するうえでも実はQRコード決済をはじめとしたキャッシュレス決済を取り入れたいところです。
クレジットカード最強説が再浮上
今回、PayPayの還元率改悪について取り上げましたが、実はこういった改悪案件は既にクレジットカード業界では当たり前のこととなっています。過去に何度も、というか、現在でもクレジットカードの改悪案件は年に何回も耳にします。つまり、改悪案件はキャッシュレス決済に付きまとう問題であるということです。
今後、QRコード決済の還元率はクレジットカードと同じように平均還元率0.5%〜1.0%となっていく運命を辿るでしょう。現実問題として高還元率を維持するのは黒字経営をするうえで難しいので仕方ないです。赤字経営覚悟なら還元率1.5%以上は可能でしょうが、赤字経営をしたい運営など何処にもありません。
そこで唱えたのが「クレジットカード最強説」です。ここ数年のキャッシュレス決済の動きをみて、なんだかんだ言ってやはりクレジットカードが最強なのではないか、と筆者はつくづく思うようになりました。
改悪案件が相次ぐ中、たしかに今でもQRコード決済のほうがクレジットカードよりも還元率で分がありますが、そもそも、QRコード決済が明らかに秀でいているのは還元率ぐらいでした。ただ、月間の利用金額によって還元率がアップするクレジットカードもありますので、単純に還元率だけでは比較できません。もちろん、還元率はとても大事なのですが、還元率だけで評価するのはただの素人です。
例えば、クレジットカードには支払いの猶予があります。今月利用した金額分を翌月に支払う、ということができるので、今手元にお金がなくても買い物をできるのがクレジットカードの大きなメリットとなっています。QRコード決済はチャージ型がほとんどなので、手元にお金がないと買い物はできませんよね。
また、限度額でもクレジットカードに分があります。QRコード決済の限度額は最大で10〜50万円程度です。対して、クレジットカードは限度額は、一般カードは10〜50万円が限度額の平均と言われていますが、ゴールドやプラチナ、ブラックといったグレードになると限度額は100〜500万円、無制限といったものまであるので、クレジットカードのほうが高額の買い物に向いています。
サービスを比べるとその差は歴然です。QRコード決済は基本的に付帯サービスはないですが、クレジットカードは旅行傷害保険をはじめ、空港ラウンジ利用、空港までの手荷物宅配、レストランの予約サービス、レジャー施設などの優待割引、系列店での特定日割引、コンシェルジュサービス、ロードサービスなどなど、QRコード決済には付帯されないサービスがたくさんあります。
このような優秀なサービスが受けられるのは、クレジットカードというものが審査に通ったものしか保有できない=信用力があるものだけが持つことを許された特権だからです。QRコード決済は審査なしで誰でも利用できますが、クレジットカードは審査に通過しないと保有できないので、審査に通過したものには様々な特典が与えられるのです。これこそがクレジットカードの最大の魅力とも言えます。
クレジットカードは一般的に年会費有料タイプのほうがサービスの質は高くなりますが、年会費無料タイプでも盗難・紛失保険はもちろん、優待割引や特定日割引などを受けられるので十分なサービス内容となっています。例えば、保険に関しては合算が可能なので、メインカードを年会費有料タイプ、サブカードを年会費無料カードというような形で保有してあげると、維持費を抑えながら保険を手厚くすることができたりします。
渦中のQRコード決済だってそもそもクレジットカードでチャージできるものが多いわけですから、キャッシュレス決済の中ではやはりクレジットカードが最も上に立つ存在だということを認識させられます。この先もずっとクレジットカードが中心となってキャッシュレス決済を支えていくことになるのでしょう。そのためにも、自分に合ったクレジットカードを選んでいきたいものです。