クレジットカードといえば、カード表面にカード番号や氏名が刻印されている、というのが誰しもが持つイメージだと思います。実際、2020年現在ではほとんどのクレジットカードにカード番号や氏名が凹凸に刻印された、いわゆるエンボス加工が施されています。
しかし、今後、エンボス加工が施されたクレジットカードは過去の遺物となる可能性が出てきました。というのは、カード番号の凸凹の刻印がない「エンボスレスカード」がついに三井住友カードから登場するのです。
「デザインは今のままでも十分」といった声は多いのですが、エンボスレスカードには実は様々なメリットがあります。と同時に、デメリットもありますので、メリットとデメリットの両方をみて、エンボスレスカードの今後の可能性について探っていきましょう。
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エンボスレスカードとは?
エンボスレスカードは、カード番号や有効期限、氏名が“刻印”されていないクレジットカードのことです。
多くのクレジットカードは、カードにはカード番号や有効期限、氏名が刻印されていますが、この刻印はエンボス加工と呼ばれ、凸凹の加工が施されています。凸凹した感触のある部分がエンボス加工が施された部分となります。
なぜ、エンボス加工が施されたクレジットカードが現在主流となっているかというと、過去にインプリンターと呼ばれる読み取り端末使っていたからです。正確には、読み取り端末ではなく複写端末といったほうがいいかもしれません。
エンボス加工が施されたクレジットカードをインプリンターを使って複写専用の用紙に押し付けることで、カード情報を複写し、決済を行うというものでした。複写することで転記ミスを防ぐことができたことから古くから使われてきました。
しかし、その後、カード情報はカード内部に集約され、裏面の磁気部分をスライドしてカード情報を読み取るタイプが一般化し、現在ではICチップにカード情報が集約されるタイプが主流となっているため、現在ではスライドする必要すらなくなり、カード情報をエンボス加工する必要はそもそもなくなっていきました。
そこで登場したのが「エンボスレスカード」です。エンボスレスカードはこれまでと同様にICチップにカード情報が集約されており、デザインは非常にシンプルとなりやすいのが特徴的です。
2020年1月時点ではまだ普及していませんが、今後各社がエンボスレスカードを登場させる可能性は高いです。そうなってくると、券面デザインが大きく変わるカードも出てくるので、デザイン面での人気に大きな変化があるかもしれません。
エンボスレスカードの先駆けはアップルカード?
「聞いたことはあるけどまだ実際にエンボスレスカードを見たことがない」という方は多いのではないでしょうか。しかし、実はもうすでにエンボスレスカードは世に放たれていました。
エンボスレスカードのカリスマ的存在となっているのが「アップルカード」です。アップルカードは、iPhoneでおなじみのアップル社が国際ブランドであるマスターカードと手を組んでアメリカで発行を開始しているクレジットカードです。2020年1月時点では日本ではまだ導入の予定はありませんが、今後導入される可能性は極めて高いです。
アップルカードの券面デザインを見てみると、アップルのロゴ以外にはエンボス加工が施されている部分がないのが特徴的です。それどころか、カード番号すら見当たりません。実はアップルカードはカード番号の記載がないのも大きな特徴です。アップル端末と連携して利用するため、カード情報は全てiPhoneなどのアップル端末に集約されるのです。
「カード情報をiPhoneに取り込むのはセキュリティ的にどうなの?」と思う方は多いでしょうが、iPhoneにはTouch IDやFace IDがありますので、クレジットカード自体にカード情報を記載するよりも断然セキュリティは高いと言えます。
アメリカでは2019年夏よりアップルカードの発行を開始しており、既に利用しているユーザーが多くいます。著名人から「限度額の設定が性差別的だ」と指摘を受けましたが、こうした騒動のおかげもあって、アップルカードの認知はさらに広まることとなりました。
スマホ業界を盛り上げたiPhone、パソコン業界を盛り上げたiMacやMacBook、アップルは常に時代の最先端を行く企業なので、今後クレジットカード業界が盛り上がること間違いなしです。アップルカードの登場で今後エンボスレスカードが主流となっていくと筆者は確信しました。
三井住友カードが2020年2月3日よりエンボスレスカード発行を開始
「エンボスレスカードは遠い未来のもの」と言われてきたのですが、その未来は突如としてやってきました。
三井住友カードが2020年2月3日よりエンボスレスカードを発行すると発表し、業界を騒然とさせたのです。それまで大した噂にすらなっておらず、発表があったのは2020年1月中旬のことでしたので、まさに青天の霹靂でした。
発表から2週間ちょっとでエンボスレスカードを実際に発行しはじめるということだったので、かなり前から水面下では話が進んでいたのでしょう。こういった機密情報が外部に一切漏れなかったのは流石です。
三井住友カードのエンボスレスカードはアップルカードとは異なり、カード“裏面”にカード番号や氏名、セキュリティコードといったカード情報が全て記載されているのが最大の特徴です。
ちなみにですが、カード番号が裏面に記載されるのは日本初とのことです。三井住友カードは日本のクレジットカード産業をリードする存在なので、日本初の試みをやっていくるあたりは“三井住友らしい”と感じさせます。
また、エンボスレスカードの発行に伴い、海外の店舗やネットでの利用をスマホアプリで簡単に制限できる「あんしん利用制限サービス」を2020年3月より開始予定のことで、より一層、クレジットカードを安心して利用できる環境を整えるようです。
既に三井住カードをお持ちの方は、次回のカード更新時に新しいデザインのカードが届きます。更新時まで待てないという方は「カードデザイン変更の予約はこちら」からデザイン変更の予約※ができますので、ぜひご検討ください。
※予約期間は2020年1月30日17時までとなっていますので、気になる方はお早めに。
デザイン変更の予約の対象は、プラチナ、ゴールド、プライムゴールド、一般カードとなっています。予約すると2020年2月3日以降順次お届けとなりますので、お楽しみに!
余談ですが、筆者は三井住友プラチナカードを保有していますが、新しいデザインが好みではなかったため、デザインの変更は行わない予定です。
エンボスレスカードのメリット
エンボスレスカードには実に様々なメリットがあります。メリットをみてみると、なぜこれまで各社がエンボスレスカードを発行していなかったのか不思議になるぐらいです。エンボスレスカードは今後主流になる可能性が非常に高いので、今は不要と思っていてもメリットぐらいは知っておきたいものです。
防犯効果が高くなる
エンボスレスカードの最大のメリットは、防犯効果を高められることです。
クレジットカードの表面にカード情報が記載されているのは実は非常にリスキーです。例えば、会計時にクレジットカードを提示する際に表面を出しますよね。すると、店員さんはもちろんのこと、その後ろに並んでいる人にもカード情報が丸見えになってしまいます。
カードを他人に見られる状況では、カード番号・氏名・有効期限は簡単に漏洩してしまいます。ネットショッピングサイトによってはカード番号・氏名・有効期限だけで決済できてしまうこともあるので、カード情報が盗まれてしまうのは防犯面で非常にリスキーなのです。
カード情報がカード裏面に記載されることになれば、クレジットカードの表面を提示すればカード情報が盗み見される心配がありません。この場合、必要な情報がカード裏面に記載されているので、カード裏面は見せないように注意しないといけません。
ただ、カード裏面には署名欄があるため、店員さんは署名されているか否かを確認する場合があるので、このとき周囲にカード情報がバレてしまう可能性があります。とは言っても、確認するのは一瞬なのでそこまで警戒する必要はないでしょう。
現行のエンボス加工が施されたクレジットカードを利用する場合、カード情報が盗み見されてしまわないようにカードを裏面にして会計作業を進める配慮をしてくれる店員さんがいますが、今後はそのようなこともなくなってくるのかもしれません。
基本的な利用方法は変わらない
なにかと新しいものを導入するのを嫌がる方はいます。QRコード決済が良い例でしょう。QRコード決済を利用すれば、ポイントがたくさん貯まるのでクレジットカードを保有している人でQRコード決済を利用しないのはもったいないです。
クレジットカードにも実は同じことがいえます。一昔前はICチップのないクレジットカードが多く、防犯効果の弱いICチップなしのクレジットカードをICチップありのクレジットカードに変更させたいと考えているカード会社は非常に多かったのですが、自主的にICチップありのクレジットカードの変更をする方は少なかったです。
エンボスレスカードの導入にあたって、「別に今のままで十分だから変える気はない」と考えている方は多いでしょう。筆者もその一人でした。ただ、エンボスレスカードとなっても基本的な利用方法は変わらないので、デザインさえ気に入れば、変えてしまっても全く問題ないです。
従来と同じくカード本体に必要なカード情報は記載されていますので、ネットショッピングの際はカード情報を元に決済を行ってください。店頭での決済時には通常どおり提示すればいいだけです。最初は店員さんが戸惑うかもしれませんが、カードを見ればすぐに理解するでしょうし、エンボスレスカードの認知が広まれば何ら問題なく利用できるようになります。
老朽化対策につながる
エンボス加工が施されたクレジットカードこそクレジットカード、というイメージがあるかもしれませんが、実はエンボス加工が施されたクレジットカードは老朽化しやすいのがデメリットです。
筆者が保有している三井住友プラチナカードは黒い券面にエンボス部分がシルバーでプリントされていましたが、保有してから1ヶ月ほどでシルバーの塗装部分が剥がれ始めてしまいました。
プリント部分が消えてしまってもカード番号を認識できれば使用上の問題はありませんが、既に何年か使っているかのような使い古された見た目になってしまうので、そういった点を改良するためにエンボスレスカードは役立つのではないか、と期待されています。
例えば、三井住友カードのエンボスレスカードは、カード表面のカード番号は裏面に記載され、かつ、エンボス加工が施されないので擦れなどで簡単にプリント部分が剥げることはないでしょう。また、今後はアップルカードのようにカード番号を記載しないカードも登場する可能性があるので、そもそもプリントさえ必要なくなる可能性もあります。
また、昨今はICチップの搭載によって磁気部分をスライドしてカード情報を読み取る必要がなくなり、スライドによる擦れも今後減ってくるので、クレジットカードはより老朽化に強いものとなってきています。
クレジットカードは有効期限が平均5年となっていますので、老朽化対策は実はかなり重要です。特に高ステータスカードを保有している方はクレジットカードをキレイな状態に保ちたいと考えている層が多いので、老朽化対策に躍起になっているカード会社は高く評価していると思います。
例えば、アメックスプラチナなんかは年会費が13万円(税別)もするので、ちょっとした高級アクセサリーを身に着けているようなものですから、キレイな状態を保ちたいというのはすごくよくわかります。
財布がスリムになる
カード番号などエンボス加工が施された部分はだいたい平均で0.5mmほどの高さが出るので、カード1枚につき厚紙1枚ぐらいの厚さがあることになります。
カード1枚ぐらいだったあまり気にならないでしょうが、例えば、カードが5枚あるとすると0.5mm×5枚=2.5mmの厚さとなってしまうので、エンボス加工が施されるのとそうではないのとでは財布の厚みに大きな差が出てきます。
カードの枚数が多ければ多いほど財布の厚さは気になるでしょう。保有している全てのクレジットカードがエンボスレスカードになれば、財布はかなりスリムになってきます。
昨今、財布をスリムにしたいと考えている方はとても多いです。だからこそ、電子マネーやQRコード決済サービスなどがかなり普及していますよね。小銭は特に財布のスリム化の邪魔になるので、キャッシュレス決済の導入は財布のスリム化には欠かせません。
そこにクレジットカードのエンボスレス化が進めば、財布のスリム化に大きな手助けをしてくれることになります。将来的にはカードレスのクレジットカードも登場する可能性があるので、財布自体を持ち歩くのが時代遅れという日は実はそう遠くない未来かもしれません。
カード番号・有効期限・セキュリティコードが一目でわかる
これまで多くのクレジットカードはカード番号と有効期限はカード表面に、セキュリティコードはカード裏面に、といった具合に別々に記載されているのが一般的でした。
カード情報を裏面と表面に分けて表示するのはどういった意味があったのでしょうか。推測するに、どちらか一方の面にカード情報を記載するとカード情報が簡単に盗み見されるため、その対策の意味があったのでしょう。
しかし、今の時代、カード情報を盗まれ不正利用されても補償はしっかりと行われますので、カード情報を盗み取られることはそこまで恐れるべきことではなくなってきました(もちろん、しっかりとカード情報を管理することが大前提)。
カード情報を表面と裏面に分けて記載してあることで面倒なのは、ネットショッピング時にカード情報を入力する際、どちらの面も確認しないといけないことです。普段からクレジットカードを利用する方ならセキュリティコードぐらいは覚えているかもしれませんが、頻繁に利用しない方は利用のたびに確認しなければならず、それが意外と面倒でした。
エンボスレスカードの場合、カード裏面にカード情報を記載することでひと目でカード情報を確認することができるため、カードの両面をチェックする一手間を省けるのがメリットです。ただ、カード会社によってはエンボスレスカードでも従来どおり、表面と裏面にカード情報を記載する場合もありますので、全てのエンボスレスカードにとってのメリットは言えないです。
カード会社は発行費用を抑えられる
最後のメリットはカード会社が享受できるメリットです。私たちは普段、カード会社にとってのメリットなんてほとんど考えることがないです。でも、たまにはカード会社に身にもなってみましょう。
通常、年会費無料のクレジットカードは、カードの審査からカードの作成、配送、情報の管理など全て無料でやってくれています。よく考えるとこれってすごいと思いませんか?中でも特に費用がかかるのがカードの作成と言われています。
一般カードの場合、多くはプラスチック製ですが、プラスチック製とはいえ頑丈ですよね。クレジットカードが折れたという事例はあまり耳にしません。思いの外、頑丈に作られているのです。それなのに無料なのです。
カードの作成時にエンボス加工を施す必要がなくなれば、それだけで工程が一つ省けるようになるわけで、カードの発行に関わるコスト削減につなげることができます。事実、三井住友カードは2020月2月3日以降に入会した方は年会費を永年無料とすると発表をし、ユーザーを驚かせました。これもコスト削減のおかげかもしれません。
カード情報はエンボス加工を施す必要がなく、プリントすればいいだけなので、圧倒的に発行費用を抑えることができるようになります。エンボス加工はレーザーなどで行うため、時間もかかっていましたが、プリントなら一瞬でできるので、エンボスレスカードが主流になると今後はカードの発行期間も短縮される可能性があります。
エンボスレスカードのデメリット
エンボスレスカードには様々なメリットがありますが、その反面、デメリットもあります。デメリットを見てみると、エンボスレスカードに変更してもいいのか悩んでしまうかもしれませんが、事前にデメリットをしっかりと把握しておけば、いざというときに役立つので確認しておきましょう。
カード情報が消えてしまう可能性がある
エンボスレスカードという名のとおり、エンボス加工が施されていないわけですから、カード番号や氏名、有効期限などのカード情報は基本的にプリントされる形となります。
インクでプリントされるだけなので、擦れたり、引っ掻いたりするとプリント部分が消える可能性があります。カード情報は特にオンライン決済時に必要な情報となってきますので、カード情報が消えてしまうと決済できなくなります。
エンボス加工が施されていれば、プリントされた文字部分が消えても凸凹の刻印部分は残るので、かろうじてカード情報を認識することが可能ですが、エンボスレスカードの場合はそういうわけにはいきません。
ただ、カード会社もそのことを必ず把握しているはずです。また、プリントはそう簡単に消えるものではありません。故意に傷つけるなどよほどのことがない限り、自然に消えるようなことはないので、そこまで大きな心配はしなくてもいいでしょう。
念のためにカード番号と有効期限、セキュリティコードはメモをしておくのが得策です。ただし、カード情報を誰かに見られ、不正利用されると補償されなくなることがあるので、カード情報は慎重に保管・管理してください。
裏面がカード情報でゴチャゴチャになる
三井住友カードは、エンボスレスカードの発行にあたり、表面のデザインを非常にシンプルにしました。その代わりに、裏面にカード情報をはじめ、サポートデスクの番号など必要な情報をすべて記載することとなりました。
一見、カードデザインがシンプルになるのはいいこと、だと感じますが、その分、カード裏面がゴチャゴチャになる可能性が高いので、あまりにもシンプルなデザインはどうなのか、という意見が多く聞かれます。
実際にデザインが新しくなった三井住友カードを見てみると、シンプルとなった表面とは対象的に、裏面はびっしりとカード情報が記載され、ゴチャゴチャとした印象を受けてしまいます。
他のカード会社がエンボスレスカードを発行した際に、どのようにデザイン変更をするのはわからない部分はあるものの、意外と多くのユーザーは従来のデザインをキープしてほしいと感じているようです。
特に三井住友カードのエンボスレスカードは、1990年のデザイン変更でシンボルとなったパルテノン宮殿の評判が良かっただけにパルテノン神殿がなくなったことに関しては落胆の声は多かったです。裏面はゴチャゴチャしてもいいから、パルテノン神殿だけは残してほしかったという声もあるぐらいです。
店員さんが戸惑う可能性がある
エンボスレスカードは世界的にみてもまだ定着しているとは言えません。多くの方がエンボスレスカードを目にしたことがない状態で、世に放たれることになるので、一番困惑するのはお店の店員さんでしょう。
ユーザーがエンボスレスカードを理解していても店員さんが初めて目にすることなれば、「これってクレジットカードなのかな?」「これで本当に決済できるのかな?」と最初は少々戸惑う可能性が高いです。
とはいえ、エンボスレスカードは今後普及するはずですから、戸惑う可能性があるのは最初だけです。ある程度、時間が経過すれば、エンボスレスカードへの認識は広まり、いずれは普通に使えるようになってきます。
それでも、普段あまりクレジットカードを使う方が少ない環境では「お客さんこのカードは使えませんよ」なんて言われる可能性があるので、「これはエンボスレスカードで刻印がないんです」「決済できるので手続きしてみてください」とその都度、丁寧に説明しなければなりません。そういったことを考慮すると最初のうちは少し面倒に感じることもあるかもしれません。
海外で利用できない可能性がある
海外と日本ではクレジットカードの利用環境が大きく異なる場合があります。基本的には日本よりも海外のほうがクレジットカードを利用する環境は整っていますが、国によっては古くからクレジットカード決済を行ってきたせいで読み取り端末も古いものを使っており、エンボスレスカードを受け付けない場合があるのです。
観光地以外や新興国では、カード番号や有効期限、氏名などを転記するインプリンターと呼ばれる古い端末を使ってカード情報を読み取る場合があるのですが、インプリンターは凸凹のエンボス加工を利用するのでエンボスレスカードだとカード情報を読み取ることができません。
そもそも、クレジットカードにエンボス加工が必要だったのは、このインプリンターと呼ばれる読み取り端末が昔は主流だったからです。カード番号や有効期限、氏名といった情報を凸凹のエンボス加工に施すことでインプリンターを使って正確に複写することが可能だったのです。
しかしながら、インプリンターは今ではほとんど見かけることがなくなっています。海外で、しかも、よほどの僻地に行かれる方でない限り、エンボスレスカードを使っても問題ないでしょう。
ただ、海外でも日本と同様にエンボスレスカードに見慣れていない店員さんが戸惑うことがあるので、カード情報が記載されていること、決済が可能であることをしっかりと伝えることが大事です。裏面を見せれば、決済できることを理解してくれるはずです。
新しいデザインの好みが分かれる
新しいデザインの好みが分かれることがエンボスレスカードの最も議論を呼ぶところではないでしょうか。
デザインを気に入ってクレジットカードを作る方は一定数います。例えば、三井住友カードの場合、パルテノン神殿のデザインが高級感があり人気だったのですが、エンボスレスカードにはパルテノン神殿のデザインが施されておらず、非常にシンプルなデザインとなってしまったため、落胆の声が多いです。
他のカード会社でも、エンボスレスカードの導入で既存のデザインから大きく変更する場合があり、気に入っていたデザインではなくなる可能性があるので、そこは大きなデメリットです。
エンボスレスカードのデザインは基本的にシンプルなものになるパターンが増えるでしょうから、ゴチャゴチャしているカードならデザイン変更はむしろメリットかもしれません。例えば、楽天カードは昔は漢字で「楽天」と記載されダサいと言われてきましたが、近年はシンプルになっており、エンボスレスカードに変更する機会にはさらにシンプルになるかもしれません。
カード会社ができる対策としては、新しいデザインと既存のデザインも選べるようにすることではないでしょうか。「デザインが気に入らなくなったら解約する」という声は意外と多いので、ユーザーに選択肢を与えることはとても大事なことです。
エンボスレスカード導入で問われるカード会社の手腕
2020年2月3日より国内大手の三井住友カードがエンボスレスカードの発行を開始します。既に業界ではエンボスレスカードは実在しているので、三井住友カードがエンボスレスカードを発行する初めてのカード会社ではありませんが、カード裏面にカード番号を記載するのは日本初とのことです。
あのアップルもカード番号が刻印されていないエンボスレスカード(※アップルのマークのみ刻印)をアメリカで発行しています。2020年1月時点では日本導入は未定ですが、近いうちにサービスを開始するでしょう。
三井住友カード、アップルの両者に言えるのは、常にどこよりも先駆けて新しいサービスを提供していることです。両者はもともとは違う分野ではあるものの業界のトップに君臨し、そして、今後は“クレジットカード”という分野でぶつかり合うことになりそうです。
国内のカード会社として既に圧倒的な支持を得ている三井住友カード、そこにクレジットカード分野ではまだ未知数のアップルがどのように対抗してくるのかかなり見ものです。アップルカードに軍配が上がるのではないか、と筆者は予想していますが、国内のカード会社としての意地を見せてきそうな三井住友カードの動きにも今後期待せずにはいられません。
こうした動きが活発になる中で、他のカード会社も何か手を打たなければ、三井住友カードとアップルカードに大打撃を与えられる可能性があります。そこで各カード会社の手腕が問われるわけです。
ユーザーとしては何か新しい動きがあったらカード会社に早急に動いてもらいたいと思うものです。例えば、今までに例がない類の不正利用が発生したときに、動きの早い三井住友カードやアップルカードなら何らかの手を打ってくれそうな感じがしますよね。逆に、いつも動きの遅いカード会社はこういったときにしっかりと対応してくれるのか心配で仕方ないです。
キャッシュレス決済が普及していく中で、今後、私たちはより一層クレジットカードを使う機会が増えていくはずです。より安心したクレジットカードライフを送るためには信頼のおけるカード会社を選ぶ必要があります。その決め手の一つとして行動が早いカード会社を選ぶことがとても大事になってきます。