筆者は根っからのキャッシュレス決済派です。しかしながら、世の中には現金決済派のほうがまだ圧倒的に多い印象を受けます。事実、そうなのです。
筆者はいつも「時間がかかる現金決済が嫌にならないのかな?」と感じています。例えば、朝の通勤時に急がれている方は多いと思いますが、そういう方に限ってコンビニで現金決済していて「それじゃあ、時間に余裕が持てなくて当然だ」なんて思ってしまうわけです。
では、実際に現金決済とキャッシュレス決済(クレジットカード決済・電子マネー・QRコード決済)の決済時間はどのぐらい違うのでしょうか。筆者が実際に特定の決済手段に限定し、1日の中で決済時間にどのぐらい差が出るのか検証してみましたので、気になる方はぜひ最後までご覧ください。
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比較検証のための設定条件について
今回、現金決済とキャッシュレス決済を比較するにあたり、1日の決済時間を検証するために、同じ条件で検証することが妥当と判断しました。
現金決済・クレジットカード決済・電子マネー決済・QRコード決済、計4つの決済方法の決済時間を比較することにしましたが、同じ条件にするために各決済方法ともに日曜日を利用して検証することにしました。
クレジットカード決済・電子マネー決済・QRコード決済については利用できる店舗が限られるため、4つの決済方法すべてを利用するために昼食はコンビニで、夕食は各決済方法が利用できる店舗で済ませることにしました(全て同じ店舗で済ませたいところでしたが筆者の自宅近くにすべての決済手段が利用できる店舗がありませんでしたので、利用した店舗についての詳細は各決済方法の検証結果をご覧ください)。
また、検証のためにあえて各日ともに昼食・夕食以外に「その他の買い物」を追加しました。その他の買い物については各決済方法に対応した店舗で日用品などの買い物をしました。店舗によって決済時間に多少の違いが出てくるかもしれませんが、ほぼ同じ条件となっていますので、より正確な検証が行えているはずです。
決済時間の計測のタイミングについて
今回の検証で大きなポイントとなるのが「決済時間」ですが、金額が表示されてから実際に決済を完了し、レシートを受け取るまでの時間を決済時間として計測することにしました。こうすることで、購入する品物の数が違っても決済時間に影響が出ないようにしています。
また、現金決済の場合は紙幣や貨幣を取り出す時間、クレジットカード決済の場合は暗証番号を入力したり、サインをする時間、電子マネーやQRコード決済はスマホで認証完了するまでの時間を考慮することで、よりリアルな決済時間を検証することができました。
各決済の1日の決済時間を検証
さて、ここからは実際に各決済の1日の決済時間を検証してみた結果を包み隠さずに発表していきます。
筆者自身このような検証をしたことが今までになく、ある程度の予想をしてから検証に臨みましたが、予想外の結果となったので、皆さんもどの決済方法が速いのか、また遅いのか、予想をしてから結果をご覧になってみてください。
現金決済の1日の決済時間は1分19秒
昼食はセブン-イレブンで現金決済し、決済時間は23秒でした。
コンビニで久々に現金決済をすることに意気込んだ筆者は財布を開いたままの臨戦態勢で、いつでもお金を払える状態でこのタイムを記録したので、通常ならあと4〜5秒はかかっていたはずです。ちなみに、筆者の前にお会計をされていたご高齢の方は筆者の倍以上となる48秒もかかっていました。
夕食は大戸屋で現金決済し、決済時間は29秒でした。
金額が細かくなってしまったことと、店員さんが少しもたついてしまったことで、昼食時よりも決済時間が長くなりました。現金決済は小銭の多さや、店員さんの技量に左右されることがあるので、そのあたりが決済速度を左右する要因となってきます。
その他の買い物として、食料品を買うために近所のスーパーで現金決済し、決済時間は27秒でした。
スーパーの店員さんはテキパキとしている方が多いので、「これは最速か?!」と期待していましたが、意外とかかっていました。今回はレシートをさっと渡してくれましたが、店員さんが袋詰めを行う店舗では袋詰めが終わってからレシートを渡されたりするので、そういった場合にはレシートの受け取るのまでさらに時間がかかる可能性があります。
丸一日、現金決済をしたこの日の決済時間の合計は1分19秒でした。
クレジットカード決済の1日の決済時間は45秒
昼食はファミリーマートでクレジットカード決済し、決済時間は11秒でした。
一昔前まではクレジットカードを店員さんに手渡ししていましたが、現在はほとんどの店舗で自分でカードを読み取り端末に挿入する形になっていますので、以前よりも時間がかかる印象です。それでも、セキュリティー面では自分で決済したほうが安心感があるのでこの方針でも構わないと筆者は感じています。
夕食はCoCo壱番屋でクレジットカード決済し、決済時間は14秒でした。
店舗によるのかもしれませんが、筆者が利用した店舗ではクレジットカード決済の場合に暗証番号の入力が必要でしたので想像よりも時間がかかりました。それでも15秒かかっていないので遅いとは感じませんでした。
その他の買い物として、日用品を買うためにドン・キホーテでクレジットカード決済し、決済時間は20秒でした。
サインを求められましたので、時間がかかってしまいました。サイン不要なところ、金額次第でサインを求めるところ、といったように店舗によって対応が異なりますので、最速を求める方はサイン不要のところを選んだほうがいいでしょう。ちなみに筆者はサインの時間を短くするために、筆記体で署名をしています。律儀に漢字で署名されている方が多いですが、漢字だとどうしても時間がかかってしまいます。署名はどの書式で書いても問題ありませんので、最速を求める方は筆記体もしくはカタカタで書くといいです。
丸一日、クレジットカード決済をしたこの日の決済時間の合計は45秒でした。
電子マネー決済の1日の決済時間は27秒
昼食はローソンで電子マネー決済(iD)し、決済時間は9秒でした。
ローソンは電子マネーの反応が他のコンビニに比べて若干遅いような気がします。セブン-イレブンやファミリーマートであれば、もう1〜2秒ほど早くなっていたかもしれません。それでもほんの少しの誤差なのでそこまで気にならないでしょう。とはいえ、筆者のようなせっかちな人は気になるので最速を求めるならローソンは避けたほうがいいかもしれません。以前、大阪のあるローソンでiDを利用しようとしたところ「このレジ、電子マネーの反応が悪いんですよね」と店員さんに言われ結局iD決済ができず、諦めてしまったことがありました。電子マネーにはそういったリスクも“稀”にありますので覚えておきたいところです。
夕食はマクドナルドで電子マネー決済(iD)し、決済時間は7秒でした。
4つの決済方法の中で最速を叩き出しました。マクドナルドのようなファストフード店はお客さんの回転が命なので、店員さんがテキパキしている印象を受けます。それを知っていたので筆者も電子マネー決済をするときにマクドナルドのようなファストフード店をよく利用します。
その他の買い物として、日用品を買うためにマツモトキヨシで電子マネー決済(iD)し、決済時間は11秒でした。
筆者が利用した店舗ではいくつかの電子マネーを選べるようになっており、自分で選ぶ方式となっていたため、通常よりも少し時間がかかりました。やはり、いくら電子マネーとはいえ、ひと手間増えると決済時間は伸びてしまいます。店員さんが電子マネーの種類を選択するレジであればもう少し早く決済できたでしょう。
丸一日、電子マネー決済をしたこの日の決済時間の合計は27秒でした。
QRコード決済の1日の決済時間は49秒
昼食はセブン-イレブンでQRコード決済(PayPay)し、決済時間は15秒でした。
QRコード決済は決済スピードが武器となる、という話はよく耳にしますが、実際はそこまでめちゃくちゃ速いというわけではありません。便利なのは認めますが、電子マネーには一歩及ばない印象があります。
夕食はフレッシュネスバーガーでQRコード決済(PayPay)し、決済時間は20秒でした。
筆者の前に3組並んでおり、それぞれの決済方法を見ていましたが、すべて現金決済していました。実際に筆者がQRコード決済を選択したときには、そもそもQRコードを利用する方があまり多くないのか、店員さんが少し戸惑ってしまい、予想よりも時間がかかってしまいました。
その他の買い物として、日用品を買うためにビックドラッグでQRコード決済(PayPay)し、決済時間は14秒でした。
ビックドラッグはビックカメラの中に入っているドラッグストアです。ビックカメラは全国の駅構内や駅チカに隣接していることが多く、駅を利用するお客さんはSuicaやPASMOをはじめとしたキャッシュレス決済をされる方が多いためか、ビックドラッグでもキャッシュレス決済をされる方が多く、どの決済方法を選択しても店員さんも慣れている様子で、決済をスムーズに済ませることができました。
丸一日、QRコード決済をしたこの日の決済時間の合計は49秒でした。
4つの決済方法の決済時間の開きは最大52秒
現金決済・クレジットカード決済・電子マネー決済・QRコード決済の4つの決済方法のうち、最速は電子マネーの27秒で、最遅は現金決済の1分19秒となり、その開きはなんと52秒もありました。
1日の中で決済時間だけで1分弱も差が出てしまうわけです。「たった1分」と捉えるのか「1分もムダにした」と捉えるのかはあなた次第ですが、筆者はどちらかといえば後者です。というのは、これを人生で換算するとえげつないほどの差が出るからです。
毎日52秒の差が出るとすると、1年間で「52秒×1年間(365日)=18980秒=316.33分=5.27時間」の差が出ることになります。
20歳から80歳までの60年間で計算すると「52秒×60年間(21900日)=1138800秒=316.33時間」となり、日にちに直すと生涯で「13日間と4時間20分」の差が出ることになります。
結果的に決済時間が1分を超えたのは現金決済だけでした。現金決済が最遅であることは予想はできていましたが、ここまで差が開くとは予想していませんでした。現金決済に慣れていない人なんていないわけで、それでもこの遅さなので、現金決済がこれ以上速くなることは考えにくいです。
少し意外だったのはQRコード決済に49秒もかかってしまったこと。店員さんの不慣れなどもありましたが、思ったよりも時間がかかると感じました。今後、QRコード決済はますます増えていくでしょうが、クレジットカード決済や電子マネー決済を上回るには決済時間の短縮が課題になりそうです。
私たちは日々、様々な面で非効率なところがあると思います。でも、現金決済から電子マネー決済に乗り換えるだけで1年で5時間以上、生涯で13日以上も時間が短縮ができるわけですから、これをやらない手はないでしょう。
「そこまで人生に焦ってどうするの?」と思う方は多いかもしれませんが、別に焦っているわけではないのです。無駄な時間を削減しよう、というただそれだけのことです。その分を他に活かせたらいいと思いませんか?
前の方のお会計を待つ間にイライラすることは誰でもあるはずです。ぱぱっと会計を済ませられるようになれば、フラストレーションはもう溜まりません。こうしたことが生活に余裕をもたらすきっかけとなるのです。
JCBの調査結果でもキャッシュレス決済の勝利
2019年8月28日にJCBが発表した「決済速度に関する実証実験結果」によると、この調査でも現金決済とキャッシュレス決済では、キャッシュレス決済に分があることが証明されていました。
具体的には、現金決済は決済時間が平均28秒かかったのに対し、キャッシュレス決済の決済時間は平均12秒で、キャッシュレス決済のほうが平均16秒も速かったと明らかにしました。
今回、筆者は自分ひとりでこの検証をしましたが、JCBが行った実証実験では20〜40代の男女を対象に各決済方法ごとに25名で検証したとのことで、より正確に平均がとれたことになります。ただ、50代以降の方は現金決済をする際にもっと時間がかかるはずですから、差はさらに開くと考えたほうがいいかもしれません。
また、この実証実験で興味深かったのは「労働時間」に関しても言及されていることです。コンビニ来客数は1日平均848人で、このうち半数がキャッシュレス決済に移行するとコンビニ店員の労働時間は約2時間減少、全てがキャッシュレス決済に移行すると労働時間はなんと約4時間も減少する※(848人×16秒=13,568秒=3.8時間≒4時間)というのです。
キャッシュレス決済は私たち消費者にばかりメリットがあると考えられがちですが、実は事業者にとっても会計時の手間や負担を減らせるというメリットがあるわけです。特にコンビニはどこも人員不足と言われているので、キャッシュレス決済に力を入れているのも納得といったところです。
現金決済派は「私は現金でも全然問題ないから大丈夫」なんてことをよく言うのですが、事業者のことも考えるならキャッシュレス決済に移行したほうがむしろ親切です。キャッシュレス決済は双方にとってメリットが多いのですから。
キャッシュレス決済のススメ
現金決済派がキャッシュレス決済に移行しない理由は様々考えられるでしょう。
まず一つは、単純にその必要性を感じていないからではないでしょうか。現金が使えてキャッシュレス決済ができないところは多いですが、キャッシュレス決済ができて現金が使えないところなんてほとんど見かけないですよね。
強いてあげるなら駅の自動改札ぐらいでしょうか。駅の自動改札はSuicaなどの交通系ICカード(キャッシュレス決済)がないとスムーズに通過できません。改札によってはIC専用のレーンもあったりします。現金決済の方はわざわざ切符を買う必要があるのでかなり面倒です。
逆に言うと、IC専用の自動改札のようにキャッシュレス決済しか対応していないような環境を作れば、現金決済派の方も仕方なくキャッシュレス決済に移行する可能性が高くなるわけです。事実、普段は現金決済だけど通勤で電車を使うからそこだけはSuicaやPASMOを使っている、なんて方は多いはずです。
そして、そういう方の中にはSuicaやPASMOなどの交通系ICカードの利便性の高さを知ってしまい、駅構内などでは自然と交通系ICカードで決済するようになっていたりします。交通系ICカードは駅構内だけに留まらず、コンビニやタクシーなど様々なシーンで使えるので今では非常に便利なツールとなっています。今後さらに利用できるシーンは広がるでしょう。
現金決済派でも何度かキャッシュレス決済を利用すれば、必ずその利便性に気づき、取り憑かれるはずです。かく筆者も以前はかなり頑固な現金決済派だったのです。というのは、クレジットカードを作ろうとした20代前半の頃に審査に落とされまくって「もうカードなんて使わない!」と決めた時期があったからです(笑)。
それでも、勤続年数をしっかりと構築し続け、やっと審査に通ったクレジットカードをコツコツと使い続けていくうちに様々なクレジットカードを作れるようになり、今では立派なキャッシュレス決済派となりました。というか、自然となってしまいました。
そういう意味では、キャッシュレス決済に移行しないもう一つの理由に、キャッシュレス決済を利用したいけどクレジットカードが作れなくて諦めている方は意外と多いのかもしれません。
クレジットカードを作るときには審査がありますので、属性に問題があると審査に通りません。今後もクレジットカードは審査がなくなることはありませんので、審査で苦労してしまう方は一定数出てきます。
でも、今の時代、クレジットカードがなくてもキャッシュレス決済はできるようになっていますので、クレジットカードが作れないからキャッシュレス決済をしない、というのはただの言い訳に過ぎなくなっています。詳しくは次節をご覧ください。
キャッシュレス決済は誰でも導入できる時代に突入
今回の検証をみてみて「キャッシュレス決済をしてみたいと思ったけどクレジットカードを作るのはちょっと悩むなぁ」「クレジットカードはほしいけど審査に通るか不安だなぁ」という意見は少なからず出てくると思います。
今回の検証では電子マネーの決済時間が最も速かったですし、実際に筆者も頻繁に利用しているので、キャッシュレス決済初心者の方にはクレジットカードを作るよりもまず電子マネー決済をはじめるところからおすすめします。
電子マネーには前払いと後払いの2種類ありますが、前払いの電子マネーならクレジットカードは不要です。前払いの電子マネーはレジやチャージ機からチャージでき、もちろん審査なしですから誰でも利用できます。
では、後払いの電子マネー(※iDとQUICPayの2種類あります)の場合はどうでしょう?後払いの電子マネーはチャージは不要ですが、支払いがクレジットカードで行われるため、クレジットカードが欠かせません。後払いの電子マネーは基本的にクレジットカードと紐付けされており、利用分がクレジットカードで引き落としされる仕組みとなっています。
例えば、iDを使う場合、iDが付帯したクレジットカードや専用カード、またはiDを取り込んだiPhoneを読み取り端末にかざすことで決済できます。クレジットカードと紐付けされているからこそ、チャージ不要で決済を楽チンに済ませられるのです。
後払いは必然的にクレジットカードが必要になりますが、実は前払いの電子マネーもクレジットカードを持っておいたほうが便利は便利です。というのは、クレジットカードから電子マネーにチャージすることができるからです。そのうえ、クレジットカードと電子マネーの相性がいいとチャージポイントももらえたりするのでとてもお得です。
それでも、先述したようにクレジットカードを作れるか不安だったり、そもそもクレジットカードを作る気のない方もいるでしょう。そういう方もキャッシュレス決済は利用できるのでご安心ください。
例えば、デビットカードやプリペイドカードでも電子マネーにチャージできます。デビットカードと口座残高から、プリペイドカードは事前にチャージした残高から利用分が引き落としされるため、残高以上の支払いができない=返済能力を超える支払いができないような仕組みとなっているため、クレジットカードと違って審査なしで誰でも作れる決済カードとなっています。
QRコード決済もまたデビットカードやプリペイドカードで利用できるものがあるため(各サービスによってチャージ方法は異なる)、必ずしもクレジットカードが必要というわけではなくなっています。
つまり、今後キャッシュレス決済の中枢となる電子マネー決済やQRコード決済はクレジットカードがなくても安心して利用できるということです。
QRコード決済は2018年から2019年にかけて特に話題になりました。セキュリティー面や補償面で不安がありましたが、二段階認証の実施や、不正利用時の補償制度を作るなど、クレジットカードと同等のレベルまでたった数年でのし上がってきましたので、これからの躍進にさらなる期待を寄せたいところです。(参照:スマホQRコード決済の一覧と選び方)