「クレジットカードなんてなんでもいい」とおっしゃる方は一定数います。しかし、そんな方も注目せざるを得ないクレジットカードが一つあります。それが「アップルカード(AppleCard)」 です。
クレジットカード業界でも注目の的となっているアップルカードですが、実はある騒動をきっかけとして窮地に立たされていたことをご存知でしたでしょうか。
というのは、一部の著名人が「アップルカードには性差別がある」 と声を荒げたのです。製品を発表するたびに何かと話題を呼ぶアップル、初のクレジットカード事業に参戦ということで注目を浴びましたが、性差別とは一体どういうことなのでしょうか。今回はその真相に迫ってみます。
アップルカード(AppleCard)とは
アップルカードはiPhoneやMacBookでお馴染みの米アップル社が考案したクレジットカード です。
アメリカ仕様のアップルカードは、国際ブランドMastercardと提携し、米ゴールドマン・サックスが発行会社 となっています。
2019年3月に製品発表会が行われ、そこで発表されたアップルカードは同年8月6日にアメリカの一部ユーザーに先行して提供が開始されました。
革新的なサービスを展開するアップル社らしく、今までにない仕様のクレジットカードとして話題になりました。
例えば、通常は必ずあるカード番号がありません。 カード番号はiPhoneの内部に取り込まれるため、カード券面にカード番号が印字されていないのです。
つまり、カードを盗難されてしまっても不正利用されにくいといったメリットがあります。カード番号を盗まれることがないため、通常のクレジットカードに比べセキュリティ力がとても高いです。
《アップルカードと一般的なクレジットカードの比較表》
アップルカード
平均的な一般カード
年会費
無料
無料〜3,000円
還元率
1.0〜3.0%
0.5〜1.5%
利用店舗
Apple Pay加盟店 Mastercard加盟店
各ブランドの加盟店
利用明細
わかりやすい
わかりにくい
カード番号
なし
あり
セキュリティー
高い
カード会社による
メッセージ機能
あり
なし
物理カード
チタン製
プラスチック製
サービス開始時点では、年会費をはじめ、返金手数料やキャッシング手数料、紙の利用明細書の発行手数料など諸費用がかからない点も注目されました。維持費がかかるクレジットカードはどうしても敬遠されがちなので、この作戦はお見事です。
また、還元率にはとても注目が集まりました。アップルカードを使ってApple Payで支払うことで還元率は驚異の2.0%を実現。 現在、日本国内のクレジットカードは1.0%を超えれば高還元率カードと言われますので、2.0%という数字がいかにすごいのかわかるはずです。
さらに、アップルで直接利用した場合(Apple Storeなど)は還元率が3.0%にアップするというのでこちらも驚きです。物理カードを利用した場合でも通常還元率1.0%になるということで、日本でもメインカードとして検討する方が非常に多くなると予想されています。
日本導入は未定だが導入の兆候あり
アップルカードが発表されたのが2019年3月でした。当サイトで公開した「アップルカードを徹底解説 」にも記載したように、当時は日本での導入は未定でした。そして、この記事を書いている2019年11月時点でもなお日本での導入は未定のままとなっています。
しかし、ここに来て一つ朗報があります。特許情報プラットフォームであるJ-Plat Patによれば、2019年7月16日にアップルインコーポレイテッドから「Apple Card」と「Apple Cash」の商標出願があったとのこと です。
企業は、新しいサービスを展開するにあたり、知的創造の保護のために特許庁に登録を申請します。そのために商標出願がなされますので、アップルカードの日本国内のサービス開始時期は未だ未定であるものの、近い将来、日本国内でも発行されるのはほぼ間違いないとみていいでしょう。
ただし、発行会社がどこになるのかは予想が難しいです。アメリカ版のアップルカードは米ゴールドマン・サックスが発行会社となっていますが、実はこのゴールドマン・サックス社はカード事業の経験が少ない企業ですので、日本国内で発行される際にもアメリカのようにカード事業の経験が少ない企業になる可能性は十分に考えられます。
ユーザーは、クレディセゾンや三菱UFJニコス株式会社、三井住友カード株式会社などと予想していますが、筆者は個人的にはソフトバンクの子会社であるヤフージャパンあたりが手を挙げると面白くなると感じています。 iPhoneを日本でいち早く展開したのがソフトバンクですから、可能性は十分にあるでしょう。
ヤフージャパンの連結子会社のワイジェイカード株式会社という発行会社が「PayPayカード 」を発行しており、昨今PayPayで話題となっているカードの一つなので、ここにきてアップルカードも発行するとなれば、かなり面白い展開になるのではないでしょうか。PayPayと連携できたら、それこそ最強のカードになるでしょう。
いずれにせよ、まだ詳細は明らかになっておらず、推測でしか話をすることができないため、今は詳細を待つことしかできない状況です。
日本で導入されることになれば、アップルカードは即座に人気が出るでしょう。日本にはアップル好きの方が非常に多く、諸外国と比べてiPhoneの所有比率が高いと言われています。アップル社製と聞けば、クレジットカードに興味のない方もアップルカードに興味を持たれるのではないでしょうか。
利用限度額に性差別があるとユーザーが激怒
アメリカの一部ユーザーに先駆けて発行されることとなったアップルカードですが、残念なことに導入開始早々に問題が発生しました。
事の発端は、オープンソース開発者として知られるデイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン氏の以下のツイートでした。
要約すると「私の妻のほうが与信スコアが高いのにも関わらず、自分は妻の20倍の利用限度額が設定された」 というものでした。
ハンソン氏自身、35.9万人のフォロワーを抱える(2019年11月時点)著名人であるため、このツイートは即座に広まったわけですが、このツイートがさらに話題を呼ぶことになったのは、以下のリプライがあったためだと言われています。
要約すると「私たちにも同じことが起こっている。私は妻も10倍の利用限度額を与えられた。私たちは口座もクレジットカードも共同で、別の資産も持っていないのに。」 というものでした。
このリプライをしたのが、あのスティーブ・ウォズニアック氏でした。ウォズニアック氏はアップルの共同創業者として大変よく知られています。今はアップルから離れているウォズニアック氏ですが、共同創業者ということ、頻繁にアップル製品についてコメントをしていることから、アップル好きの人たちはウォズニアック氏のそのコメントにいつも注視しています。
ウォズニアック氏もハンソン氏と同様にアップルカードを批判するような内容をリプライしたことで、ネット上だけでひそかに話題になっていたことが国内外のメディアからも取り上げられる事態となりました。
どちらの件も共通しているのは、妻より夫のほうが利用限度額を高く設定されていたことで、ハンソン氏はこれに対し「性差別的だ」 と強く批判しました。
この件に対し、アップルカードの発行会社であるゴールドマン・サックスは以下のようにコメントしています。
「他のクレジットカードと同様に申し込みは個別に検討しています。当社は個人の収入のほか、信用スコアや借入額、借入への対応状況などの要素から個人の信用度を判断しています。家族である2人の信用に関する決定が大きく異なるものとなる可能性があります。」
直接的な言及は避けているものの、性別によって利用限度額を設定することはしていない と判断できる内容です。
ちなみに、ニューヨーク州金融サービス局の監督責任者であるLinda Lacewell氏は「意図的か否かに関係なく、女性や保護されているグループを差別的に扱うアルゴリズムはニューヨーク州法に違反する」 とコメントしていますが、これには当たらないというのがゴールドマン・サックスの最終的な回答のようです。
筆者は個人的には「性差別的ではない」 と感じています。ハンソン氏もウォズニアック氏もどちらも著名人であり、私たちの想像を超える高所得者であるはずです。今回の件に関しては、夫妻の利用限度額の詳細な金額は明らかにされていませんが、“妻の利用限度額が低いのではなく、夫の利用限度額が高すぎた” と捉えたほうがいいのではないでしょうか。
また、アップルを批判するのもお門違いです。アップルカードの考案はアップル社ですが、実際に審査・発行を行っているのはゴールドマン・サックス社なので、批判するならゴールドマン・サックス社でしょう。実際、コメントをしているのはゴールドマン・サックス社なので、アップルも被害者といえば被害者です。
いずれにせよ、そこまで騒がれる内容ではないと筆者は感じました。クレジットカードの審査に納得がいかないことなんて誰にでもあります。それが今回は著名人であっただけの話です。むしろ、いち早くアップルカードを受け取れているだけマシでは?という意見もちらほら...。
正直なところ、アップルはこの騒動を喜んでいるとさえ感じます。というのも、お金をかけずに大々的に宣伝することに成功したからです。あえてこのような騒動を起こすためにウォズニアック氏を利用したのでは?とすら感じました(笑)。
審査正確性に疑問があるのは当然のこと
利用限度額が低く設定されることは、他のクレジットカードでもよくあることです。筆者も「え?限度額たったこれだけ?」という経験をしたことがあります。
今回のケースのように、そのカード会社でクレジットカードを初めて作るようなケースでは、利用限度額が低く設定されるのはよくあることです。ですから、アップルカードでも十分に予想できたことです。
特に今回は、消費者向け金融サービスの歴史が浅いゴールドマン・サックス社が審査を行っていたことが騒動の原因 になったと予想できます。
ゴールドマン・サックス社は株式・債券・通貨・不動産取引のブローカー業務、貸付・保険・投資銀行業務のプロとして知られていますが、まだクレジットカード業務のプロではありません。 クレジットカードの審査に関するデータが完璧に揃っているとは言い切れない状態ですから、今回のような事態が起こってしまっても何ら不思議ではありません。
よって、審査正確性に疑問の声が上がってくるのはごく自然なことです。クレジットカードの審査結果に関しては不満を抱えがちなので、そのたび審査正確性について議論を呼ぶものです。
審査結果が不満を抱き、カード会社に回答を求めても、原則、回答を得ることはできないので、今回はゴールドマン・サックス社が一連の騒動に対し早期に回答しているだけで対応は十分だったと言えます。
もしこれがハンソン氏やウォズニアック氏といった著名人のツイートでなければ、ここまで話題になっていなかったでしょうし、ゴールドマン・サックス社からの回答もなかったはずです。
逆に言えば、著名人が声を上げれば、審査結果に関してしっかりとコメントをするということがわかっただけ進歩があったかと思います。と同時にカード会社に反応してもらえる著名人は羨ましいとすら感じます。一般人が不満の声を上げたところで無反応ですからね(笑)。
もし、利用限度額が低く設定されてしまっても、他のクレジットカードと同様に増枠審査ができるような仕組みが今後できてくるでしょうから、今はそこまで問題視する必要はないと思われます。増枠審査の仕組みができないとなれば、また問題となるかもしれませんが...。
審査は厳正に行われるがどうしても各社で差は出る
まず大前提として、クレジットカードを作る際には必ず審査が行われます。 審査では申込者の属性をチェックし、内部・外部の信用情報と照らし合わせ、合格に値するかを最終的にカード会社が独自の基準をもとに判断していくことになります。
各社、クレジットカードの審査は厳正に行いますが、どうしても各社で差が出てしまうものです。例えば、A社の審査には落ちたが、B社の審査には通った、というように同じ属性なのに審査結果が分かれてしまうことは意外にもよくあること です。そこがクレジットカードの面白いところでもあります。
審査難易度はカード会社やカードのグレードによって異なってくるため、自分はどのクレジットカードなら審査に通るのか、ということをある程度確認してから申し込む必要があります。
例えば、収入が少なく、これまでクレジットカードをあまり使ったことがなくクレヒスが構築できていない方はまずは審査の甘い流通系や信販系のクレジットカード、それも一般カードから狙いを定めていくことになるでしょう。
逆に、勤続年数が長く収入に安定性があり、クレヒスも十分に構築できているような方は、銀行系や外資系の、それも一般カードだけでなくゴールドカードやプラチナカードといったよりステータスの高いカードを狙うことができるようになるでしょう。
各社で審査に差があるからこそ、クレジットカードには選ぶ楽しさがある のです。ステータスを気にする方はより審査難易度の高いクレジットカードを欲するようになるでしょうし、単にポイントをたくさん貯めたいなら還元率の良いクレジットカードを選ぶでしょう。デザインで選んでも別に問題ありません。
今回話題に上げたアップルカードは、iPhoneユーザーでなくても欲しがるクレジットカードでしょう。物理カードは他社がプラチナカードなど高ステータスカードに採用するチタン製でできていますので、保有しているだけで特別感があります。
2019年11月時点ではアップルカードは日本導入は未定で、発行会社も決まっていませんので、推測でしか話はできませんが、アップルカードの審査難易度はそこまで高いものにならないと筆者は予測しています。
事実、アップルカードユーザーの一人は、「カード発行の基準を下げて学生を含む広い層にアップルカードを提供しようとしている聞きます」 とおっしゃっています。多くのユーザーを抱えるアップルは、アップルカードを多くの方に提供し、収益拡大に繋げようとするはずです。
一般的に、年会費無料のクレジットカードはカード会社にかかる負担が大きいと言われています。年会費が有料であれば、年会費収入を得られますが、無料だと年会費収入を得られず、カードを利用した際に発生する手数料収入だけが主な収入源となるからです。
それでいて年会費無料のクレジットカードは稼働率が低いことが多いです。そこで、年会費無料のクレジットカードは多少審査を緩くしてでも顧客を獲得し続け、利用を促して手数料収入を得る、という形が一般的な流れとなってきます。アップルカードも年会費無料なので、この流れとなるのではないでしょうか。
それでもやっぱり欲しいアップルカード
「性差別的だ」 とセンセーショナルな言葉が先行し、日本でも疑問視されることとなったアップルカードですが、多くの方は「それでもやっぱりアップルカードが欲しい」 と思ったはずです。かくいう筆者もその一人です。
アップルカードを欲する理由は様々でしょう。多くの方は、還元率の良さに惹かれているでしょう。Apple Payの支払いで通常還元率2%となるため、ほとんどの方は今お使いのクレジットカードよりも還元率がよくなるはずです。
現在、日本国内で発行されているクレジットカードは通常還元率が1.0%を上回っていれば高還元率カードと言われますので、還元率2%という数字はかなり驚異的で、各カード会社も脅威に感じています。 アップルがこれからライバルになるとはカード会社は想像もしていなかったはずです。
また、アップルカードのブランド力に惹かれる方も多いでしょう。“あの”アップルが輩出するクレジットカードですから、保有していれば今後なんらかのメリットを享受できるのでは?と期待せざるを得ません。年会費無料で維持費がかからない点から、とりあえず作っておくだけでもいいでしょう。
筆者は、物理カードがチタン製であることに実は最も魅力を感じています。 「え?なんで?」と思った方は多いかもしれません。実は国内で発行されているほとんどのクレジットカードはプラスチック製のカードで、チタン製のカードは一部のプラチナカードやブラックカードにしか採用されないからです。
こちらのツイートはいち早くアップルカードを受け取った方のツイートです。チタン製であるため「プラスチックカードよりも質量がある」 とおっしゃっていますね。
写真をみてみると、想像していたとおりとてもシンプルなデザインです。本当にカード番号がないですね。これなら安心です。黒塗りされている部分には氏名が刻印されています。
プラスチック製のカードを否定しているわけではないですが、チタン製であることで重厚感が出ますし、同時に耐久性も上がりますので、長く愛用していくことを考えるとこうした工夫はすごく評価できます。
筆者は、アップルカードが日本に導入されたら、真っ先に作る予定です。iPhoneとMacBookを持っていますが、アップルが特別大好きというわけではないです。単純なクレジットカードの一ファンとしてアップルカードは必ずゲットしたいと考えています。
話題性からゲットしておきたいという気持ちもありますが、カードデザインの美しさやセキュリティの高さ、還元率の高さなどクレジットカードの基本的なスペックを高く評価しているのです。
アメリカではアップルカード導入後、シリコンバレーやニューヨークといった都市部で新しいもの好きが多い地域から導入をはじめたと噂されているので、日本でも東京や大阪といった大都市からのスタートとなる可能性がありますが、導入されればすぐに全国各地で展開されるはずです。
案内が届いたらなるべく早く申し込みをすることをおすすめします。 特に1枚作るのに相当の時間を要すことになる物理カードをご希望の場合は急いだほうがいいです。そうでなくても、新作iPhoneが出たとき、それ以上の賑わいを見せるはずですので、“なるはや”で申し込みましょう。
VIDEO
こちらの動画では、あの堀江貴文氏も「(日本国内の競争に)勝つでしょうね」「流行るんじゃないですか」 などと絶賛しています。時代の先を読む堀江氏がこれほど絶賛することはかなり珍しいので、アップルカードが成功するのはもう時間の問題といってもいいでしょう。