“個人事業主はクレジットカードの審査に通りにくい”
これはクレジットカード業界ではよく言われることです。「本当にそんなことあるの?」と思うかもしれませんが、筆者は個人事業主だった経験があり、そのように言われるワケが非常によくわかりました。筆者自身、実際に審査に落ちたことが何度かあるからです。
結論から言ってしまうと、個人事業主がクレジットカードの審査に通りにくい傾向があるのは確かです。しかし、諦める必要はありません。なぜ、審査に通りにくいのか、原因や対策方法を伝授します。
個人事業主2人のクレジットカードに関する会話
筆者と友人は、共に個人事業主時代に何度かクレジットカードに申し込んだことがあります。そこで、どのような結果になったのか、2人で会話をして振り返ってみました。
そもそも、個人事業主がクレジットカードの審査に通りにくいって知ってた?
いや、全く知らなかったんだよねー。だって、誰でも通ると思うでしょ、カード審査なんて。学生のときだって一応思ってたし。
そうだよね。個人事業主の先輩に「個人事業主になったら審査に通りにくくなるから、今のうちに事業用のカードを申し込んでおいたほうがいいよ」って言われたんだけど、大丈夫だと思って作らなかった記憶がある(笑)。
でも、仕事やめて個人事業主になろうと決めて、職業訓練校通ったりしてたから、そこまで手が回らなかったわけ。
そんなもんだよね。私は学生のときに作ったカードは限度額が低くて使い物にならなくて個人事業主になる前に解約しちゃって、個人事業主になってからカードが必要になって、申し込んだら見事落ちたって感じだった。
ちなみにクレジットカードに申し込んだのは個人事業主を始めてどれぐらいの時期だった?
たぶん3ヶ月目ぐらい。経費になりそうな出費が意外とあって、カードで管理したほうがラクじゃね?って思って、申し込んだ気がする。
私はたしか6ヶ月目ぐらいに申し込んだんだけど、その6ヶ月後に申し込んだら、また落ちたことがある(笑)。
個人事業主って収入が安定しないって思われてるんだよねー。
実際そうだしね。収入が安定しない=返済能力が低いって判断されるから、勤続年数が短いと余計に審査に弾かれやすい気がする。
それは絶対にある。個人事業主になって最初にカード作れたのが2年目に入ってからだったから、勤続年数は結構重視されてそう。
新卒の正社員も審査に通りにくいって言われてるけど、彼らは雇用されている身で、勤続年数半年ぐらいで年収が確定するから、通りにくいとは言われながらも、個人事業主よりは通りやすいよね。
個人事業主になってから、会社に雇われるのがどれだけラクなことなのか思い知った(笑)。個人事業主の信用力は、一般的な会社員の半分ぐらいしかないのかもしれないなー。
半分は言いすぎかもしれないけど、契約社員や派遣社員よりは下に見られてるのは確かだよ。
参照:スコアリングシステムの点数配分(職業)
何枚かあるけど、ひどかったのはヨドバシカメラの「ゴールドポイントカード・プラス」。店頭で「クレジットカード作りませんか?」ってキレイな店員さんに言われて、申し込んだら、見事に落ちたわけ。あれは恥ずかしかった(笑)。
私が落ちたのは「イオンカードセレクト」と「JCB一般カード」だったかなー。
どっちもいわゆる銀行系だから、審査は厳しかったはずだね。イオンカードは審査が甘いって言われてたけど、最近は方針転換したっぽい。
そうなの?まぁ共通していえるのは、個人事業主はある程度狙い撃ちしてカードを選ばないといけないってこと。
そうだね。一言でクレジットカードと言っても、審査難易度はそれぞれ違うわけだし、個人事業主に優しいカードを選ばないとダメなのは確か。特に勤続年数がまだ浅い頃はね。
それで、個人事業主になってから一番最初に作れたカードはなんだった?私は「ライフカード」だったかな。
一緒!「ライフカード」は審査甘いから色々な人におすすめできると思う。
個人事業主を始めて3年以上経ってからは一般カードとゴールドカードならほとんど通るようになった気がする。
そこまで来てやっと収入が安定しているって判断されるのかもね。勤続年数5年以上になると、ゴールドカード2枚持ちとか普通になってくるよね。私の周りにもそういう人は結構いたなぁ。
高還元率は大事だね。「PayPayカード」は審査も易しめだし、万人受けすると思う。もちろん、個人事業主にも。
結局、生き残るのは誰にでも優しいカードなんだろうね。カード会社も大変だなー。
そうだね。カード会社の利益になるように、カード決済できる場面では積極的に使っていきたいね。
個人事業主がカード審査に落ちる原因を推測
クレジットカードの審査に落ちる原因は様々ありますが、個人事業主の場合は少し特殊といえるかもしれません。主な原因が3つほどありますので、まずは以下の原因に当てはまるかどうかチェックしてみましょう。
原因その1:職業
クレジットカードの申し込み欄には、「職業」の項目が必ずあります。会社員(正社員or契約社員or派遣社員)、パート、アルバイトなど様々な選択肢がありますが、個人事業主の場合は、「個人事業主」として申告することになります。
「スコアリングシステムの点数配分(職業-雇用形態)」を見てもわかるように、個人事業主は評価が低いです。個人事業主は、高所得者が多い反面、低所得者も同時に多いからです。というのも、税務署に開業届を出すだけで個人事業主として認められますので、極端な話、ニートでも個人事業主として名乗ることができてしまいます。こうした事情もあり、個人事業主という職業は全体としての評価は高くないのです。
パートやアルバイトより評価は高いですが、会社員よりは評価が低くなり、スコアの差も意外と大きいため、このあたりが審査に落ちる大きな原因となります。しかし、職業欄で嘘をつくわけにはいかないので、ここは正直に申告しなければなりません。
原因その2:勤続年数
個人事業主における「勤続年数」は非常に大切な項目になってきています。個人事業主が一般的な会社員(給与所得者)と大きく異なるのが、所得の増減が激しいことです。1年目は事業所得1,200万円だったのに、2年目は400万円、3年目は800万円といったように、収入が安定しないのが個人事業主の特性です。
収入の安定感を表す一つの指標になるのが勤続年数で、所得の増減が激しくても、勤続年数が長くなれば、ある一定の収入を稼ぐ事ができていると判断されるようになります。
筆者もそうでしたが、個人事業主で勤続年数1年未満で新規にカードを申し込むと厳しい審査を下される可能性が高いので、まずは勤続年数を着実に積み重ねることが大事になってきます。
原因その3:収入
国税庁の「申告所得税標本調査-平成28年度(16頁目)」によれば、事業所得者の平均は411万円でした。
先述したように、個人事業主は高所得者or低所得者の両極端に分かれます。その証拠に「申告所得税標本調査-平成28年度(7頁目)」によれば、事業所得100万円以下が194万人、100〜200万円以下は468万人、200〜300万円以下は379万人だったように、個人事業主には低所得者が多いです。
収入だけが審査の合否を決めるわけではありませんが、一つの目安になっているのは確かです。「スコアリングシステムの点数配分(年収)」によれば、年収200万円以下になると急激にスコアを減少させることになるため、個人事業主の場合は特に年収200万円を切ると、厳しい審査結果をもらいやすくなるでしょう。
個人事業主が審査に通過するための対策方法
では、どのような個人事業主なら審査に通過できるのでしょう?まず、必ず覚えておいてもらいたいのは、虚偽申告は絶対にしてはいけないということ。例えば、事故情報はどんなに隠しても信用情報機関に照会すればわかります。クレジットカード会社にはある程度の調査能力がありますので、虚偽申告をしてもムダだと思ってください。正攻法で審査を攻略しましょう。
対策その1:職業は業種の選択で対策する
クレジットカードの申し込みで、必ず問われるのが「職業」。勤務先、業種、雇用形態、勤続年数、カード会社によっては社員数や会社規模の申告を求められる場合もあります。
ここでポイントになるのは、「業種」の選択です。例えば、回線契約のお仕事をされる方がいたとします。この場合、「通信業」または「情報サービス業」どちらも選択できますよね。「スコアリングシステムの点数配分(業種)」によれば、「情報サービス業」のほうがスコアが高かったので、業種を複数選べる場合は、よりスコアが高いほうを選ぶようにするといいです。
ただし、全く違う業種を選択してはいけません。運送業のタクシー運転手なのに小売業を選択する、といった虚偽申告は審査にネガティブな影響を与えてしまう可能性があるので、注意しましょう。間違った選択をした場合は、カード会社側で訂正される可能性がありますが、ネガティブな影響を与えては意味がないです。
対策その2:最低でも2〜3年は仕事を続ける
個人事業主は、税務署に廃業届等を提出することで廃業と見なされるため、基本的にはいつでも辞められるという特性を持っています。これが会社員との大きな違いです。そのため、勤務年数が返済能力(=信用力)を判断する一つの材料になってきます。
安定した収入を得られているかどうかは別として、勤務年数が長くなれば、生計はしっかりと成り立っていると判断することができるため、審査においてプラスになってきます。
一般的な会社員の場合、勤務年数1〜2年程度で新規にカードを作れるようになりますが、個人事業主の場合、最低でも勤務年数2〜3年ぐらいあったほうが安心できます。勤続年数5年以上で選択肢が広がってくる、という感じではないでしょうか。筆者も実際に勤続年数5年以上経ったあたりから、様々なカードを作れるようになりました。
対策その3:収入は正直に申告する
個人事業主は、一般的な職業に比べ、収入が審査の合否を決める大きな要素になることは否定できません。200万円以下だと厳しい審査結果をもらう可能性が高いですが、200万円以下だからといって多く見積もって虚偽申告をするのはやめましょう。カード会社によっては、「収入証明書」のコピーの提出を求めてくる場合があります。
ただ、収入証明書のコピーの提出を求めてくる事例は、キャッシング付帯のカードに多いです。これは収入の3分の1を超える融資を行わないようにするためです。キャッシングを利用する機会がなければ、申し込みの段階でキャッシング枠を設けないように設定すればいいです。キャッシング枠を設けないほうが、審査時間が短縮されます。
対策その4:その他の条件で勝負する
その他の対策も紹介しておきます。
まだ間に合うなら、個人事業主になる前にクレジットカードを作ることをおすすめします。これから個人事業主になる場合、所得が不安定になる可能性が高いです。1年目から多くの所得を見込める方はそう多くはないはずです。となれば、当分は審査にネガティブな影響を与えると予想できますので、今のうちに“事業用”のクレジットカードを作りましょう。ビジネスとプライベートを区別することで、経費の管理や帳簿付けがしやすくなります。
これから個人事業主になる方も、成り立てならまだ作れる可能性があります。カード会社によっては去年の収入等を審査材料にする場合がありますので、去年の属性に問題がなければ、現在、求職中or個人事業主に成り立てであっても審査に受かる可能性がありますので、できるだけ早めに申し込んでみましょう。
個人事業主になってからできるその他の対策としては、両親と同居するのがおすすめです。審査項目に「住居形態」があり、家族所有の一戸建てor分譲マンションにお住まいの場合、一人暮らしするよりも月々の支出が少なく、収入は少ないが出費に回わしても問題ない、また家族がいることで貸倒のリスクが少ない、と判断されますので、良い審査結果をもらえる可能性があります。
また、「借入状況」についても少し理解を深めておきましょう。銀行からの融資を受けてカフェを開業した方を例にとってみましょう。「スコアリングシステムの点数配分(借入状況)」によれば、銀行から300万円の融資を受けた場合、借入のない方に比べ、スコアは低くなります。それもそのはずで、300万円を何年もかけて返すことになるので、経済的な余裕はあまりないと判断されます。
しかし、銀行からの借入は、信販会社やカード会社、消費者金融から借入があるよりはずっとマシで、銀行以外から借入があるとスコアは大きくマイナスになりますので注意しましょう。
ちなみにですが、住宅ローンや自動車ローンに関しては、スコアはそこまでマイナスに響かないと言われているので安心してください。住宅ローンに関しては、厳しい審査に通っていること、一戸建てor分譲マンション(中古マンションを含む)に住まれていること、などがスコアアップに繋がるので、むしろプラス要素と捉えてもいいでしょう。
不安ならビジネスカードを検討すべし
個人事業主の多くは、出費が多いのに一般カードの審査に弾かれやすくて困ってる、と感じているはずです。それなら、一般カードは一旦置いておきませんか。
「え?」と思われたかもしれません。
実は、多くのクレジットカード会社より個人事業主向けのクレジットカードが発行されています。「ビジネスカード」という名称で展開されていることが多いです。
代表的なビジネスカードが「三井住友ビジネスカード for Owners」です。
審査が厳しいと言われている銀行系ではありますが、「満20歳以上の法人代表者、個人事業主の方」が申し込み条件として明記されていますし、登記簿謄本・決算書が不要なので、個人事業主の方も安心して申し込むことができます。
筆者は、個人事業主になって数年経過したあたりから、あらゆるカード会社から、ビジネスカードのDMが毎年送られてくるようになりました。個人事業主である情報をどこから得ているのか未だに謎ですが、DMを送ってきたカードの審査に通る可能性は高いといえるでしょう。
ビジネスカードを作るメリットは、プライベートとビジネスを分け、経費処理をスムーズに済ませられることです。キャッシュフローの改善、事業に役立てやすくなっていますので、ぜひこの機会にご検討ください。
ただし、ビジネスカードであっても必ずしも審査に通るわけではありません。ビジネスカードは設立年数や業績が重視される傾向が強いため、個人事業主になって1年未満なら、一般カードのほうがまだ審査に通りやすいかもしれません。また、審査に時間をかける傾向があり、長いと1ヶ月程度かかることもあるので、その点は注意が必要です。
デビットカードやプリペイドカードも検討すべし
経費処理にクレジットカードを使う理由は、単純に経費処理がスムーズに済ませられるからです。それなら、現金を使わないという意味では、「デビットカード」や「プリペイドカード」でも同じことがいえるのではないでしょうか。
そこで、クレジットカードの審査に落ちてしまった方は、デビットカードやプリペイドカードを作ることも選択肢の一つとして検討してみるのもありです。
デビットカードがクレジットカードと違うのは、指定口座から即座に現金が引き落とされることや一部利用できないシーンがあるぐらいで、基本的に同じように使えるため、クレジットカードと同じように経費処理して構いません。
プリペイドカードの場合は帳簿付けが少し特殊で、チャージ式のプリペイドカードの場合、借方科目は「貯蔵品」で、貸方科目は「現金」と帳簿します。使用した分に対しては、例えば、それが雑費なら借方科目に「雑費」、貸方科目に「貯蔵品」と帳簿します。少し複雑ですが、プリペイドカードは還元率が高いものがあるので、実はかなりおすすめです。
デビットカードやプリペイドカードは審査なしで作ることができますので、審査に不安を抱える個人事業主の方でも安心して作ることができます。