クレジットカード=便利なもの、というのは間違いなく事実です。現金決済よりも決済はスピーディーですし、盗難・紛失保険が付帯しているのでなくしてしまっても安心感があります。他にも、トラベルやグルメ関連で様々なお得なサービスを受けられるなど現金決済にはないメリットがたくさんあります。
ただ、現金決済と比較した場合に一つだけ大きな弱点があります。それは「障害」が発生したときの脆弱性です。クレジットカードは機械同士の通信によって決済を行うため、何らかの理由で障害が発生した場合に決済が不可能になってしまいます。
実はクレジットカードの障害は日々様々なシーンで起こっています。そこで今回はクレジットカードの障害が発生する理由と、私たちユーザー側でできる効果的な対策についてお話してみたいと思います。
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クレジットカードの障害とは?
クレジットカードの障害とは“何らかの理由”でクレジットカードが利用できなくなってしまうことを言います。障害でクレジットカードを利用できなくなった場合、その原因は私たちユーザーにあるのではなく、基本的にはカード会社や運営側、店舗側に原因があることがほとんどです。
クレジットカードの障害はどうしても発生してしまうものです。現金決済とは異なり、機械を使わずに決済をすることが不可能だからです(以前はインプリンターと呼ばれる電源不要の機械を使用していたことも)。現在は機械が必要なので障害は付きまとってきます。いくら機械でも常に正常に運転できるわけではないのです。
それでも、実際にクレジットカードの障害に遭われた方は意外と少ないでしょう。これまで何もトラブルなく利用できてきた、なんて方がほとんどのはずです。ですが、クレジットカードの障害は日々様々なシーンで発生していますので、他人事だと思わず、実際に障害に遭ってしまった場合にはその都度対処していかなければなりません。
2019年10月の消費税増税に伴うポイント還元事業を発端として、クレジットカードをはじめとしたキャッシュレス決済を利用する方は急激に増えました。利用者が増えると障害が発生する確率も上がってきますので、今後、クレジットカードの障害はさらに増えていくかもしれません。
2020年のクレジットカード障害実例
クレジットカードの障害はそんなに頻繁に発生しているものではない、というイメージが多いかもしれませんが、実は身近なところで発生しているので注視していく必要があります。
例えば、多くの方が利用しているJRでは2020年2月にクレジットカードの大規模な障害が発生しました。事の内容は、2020年2月10日朝早く、JRで駅にある券売機やみどりの窓口で5時間近くにわたってクレジットカードを使った決済ができなくなるというものでした。
後にわかったことですが、JRの特急券や指定席券などの販売を処理する「マルス」と呼ばれるシステムのうち、クレジット決済を担うサブシステムでトラブルが発生したということで、データベースに何らかの不具合が発生したことが主原因であった、とJRは報告しています。
JRによれば、10日の午前4時頃からシステム障害が発生したとのことで、すぐに復旧作業にあたったものの、実際に復旧が完了したのは午前9時前だったということで、復旧までになんと5時間近くもかかってしまったのです。
JRは普段から多くの方が利用するうえで、障害が起こったのが午前4時〜9時という通勤・通学時間だったこともあり、かなり大きな騒ぎとなりました。通常はこのような大規模障害であれば5時間程度の復旧なら早いと言われますが、通勤時間にあたってしまったことが不幸で「対応が遅い」などとSNSで大きな批判を浴びていました。
今回のJRの大規模障害については多くの方が被害を被ったため、テレビニュースにも取り上げられていましたし、ヤフートップページにも掲載されましたので、ご存じの方も多いかもしれません。
高額な運賃となりがちな新幹線などの乗車券は特に多くの方がクレジットカード決済しています。当然のように、障害が発生した当日も多くの方がクレジットカード決済ができるだろうと思い、現金を用意せずに券売機やみどりの窓口に足を運んだはずです。
幸いだったのは“駅”の券売機やみどりの窓口で障害が発生したことでしょう。駅であれば、コンビニATMや銀行ATMが設置されていることが多いですから、現金を引き出すことが可能です。ただ、実際のところは予想外の出来事に現金を用意できなかった方も多いでしょう。
小さな駅だとコンビニATMや銀行ATMさえない場合もありますので、時間帯が時間帯だけに大きな騒ぎとなってしまいました。現金がないからクレジットカード決済をしていた、なんて方はかなり困ったのではないでしょうか。
クレジットカードの障害が発生する理由
クレジットカードの障害は様々な理由で発生します。発生の原因を知っておくことで、実際に障害が発生したときに事情を把握できるようになるので、クレジットカードを頻繁に利用している方はしっかりと覚えておきたいところです。
サイバー攻撃
近年、様々なシーンで問題視されているのがこのサイバー攻撃です。サイバー攻撃とは簡単にいうとコンピュータシステムに対し、ネットワークを通じて破壊活動やデータの改ざんなどを行うことを言います。
サイバー攻撃はもちろん犯罪なのでやってはいけないことですが、金銭目的や愉快犯的(例:ハッキングの実力を試すため)な犯行を好むものによって行われます。
サイバー攻撃によって障害が生じ、クレジットカード決済ができなくなるだけでなく、クレジットカード情報を盗み取られてしまう可能性もあるため、運営側はもちろんユーザー自身も注意しなければなりません。
サイバー攻撃を受けると、サイバー攻撃に弱い=セキュリティ対策が怠慢である、といった運営側のイメージダウンにつながったりすることもあるので、運営側は実はサイバー攻撃に対してはかなり警戒しています。それでもサイバー攻撃を完全に防ぐことはできません。
サイバー攻撃は国内からだけでなく海外から攻撃される場合もありますし、国対国という大規模な攻撃につながることもありますので、かなり大きな事件を引き起こすこともあり、たびたびテレビニュースなどにも取り上げられ、社会問題となっています。
サイバー攻撃に対する明らかに効果的な対策がないため、各社、手を焼いているのが現状です。
データベースの不具合
データベースとは、データが集約されたものを指し、コンピュータの中に存在しているものです。しかし、物理的には存在しないものなので、データベースに不具合が生じた場合には原因を特定して復旧するまでに時間がかかる傾向があります。
運営側としてはデータベースの不具合によってシステムなどに障害が生じた場合は、復旧作業に手間がかかるのを理解していますし、実際に復旧までに時間がかかることもわかっているのでかなり厄介な問題として認識しているはずです。
2020年2月10日に発生したJRのクレジットカード決済障害についてもデータベースの不具合が主原因とされており、この件に関しては復旧までに5時間近くかかっていました。しかも、それが通勤・通学時間を直撃したため、余計にクローズアップされる結果となりました。
今後、データベースの不具合によって障害が生じることは増えていく可能性がありますので、自社で対策を強化するのか、専門のプロに任せるのか、どちらにせよ各社で万全の対策が求められます。
サーバーの不具合
サーバーとは、ホームページを表示するために必要な情報を集約しておく場所のことで、コンピュータに物理的に存在しているものです。なので、コンピュータ自体に問題が発生した場合にサーバーの不具合が発生する可能性が高くなるわけです。
特に多いのはサーバーダウンによってウェブサイトへアクセスが不可能になり、それでクレジットカード決済ができなくなってしまうパターンです。
例えば、ある高級ブランドのサイトで数量限定のバッグが発売される際、発売時間になるや否や多くのユーザーがそのサイトに一斉にアクセスすると、サーバーは処理しきれなくなってしまい、結果的にサーバーダウンが発生します。この際、クレジットカード決済ができなくなるだけでなく、ウェブサイト自体にアクセスが不可能になってしまいます。これと似たような経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。
サーバーには使用容量が予め決められている場合があり、この場合、アクセスの集中などにより使用容量が急増してアクセス不可になってしまいます。このような事態に陥らないように、運営側はサーバーを増設するなどして対策をしていく必要がありますが、対策が不十分なところはかなり多い印象を受けます。
レンタルサーバーを利用している場合は、サーバーの種類やプランによってダウンしやすい、ダウンしにくいなどあったりするので、運営側はサーバーダウンしにくいサーバーを選ぶことが大事になってきます。
クレジットカード障害発生時の対策方法
クレジットカードの障害は技術的な問題で発生してしまうことがほとんどなので、実はユーザーである私たちができる対策はかなり限られてきます。それでも実生活で使える障害発生時の対策はいくつかありますので、参考にしてみてください。
キャッシング機能で現金を確保
クレジットカードの障害が発生したときは、私たちの力では基本的にはどうにもできず、クレジットカードでの決済はできないので真っ先に諦めるのが賢明です。
となると対策としてATMなどで現金を下ろすことになるのですが、現金がないからこそクレジットカード決済を選んでいた、なんて方は意外に多いはずです。そういったときに使えるのが「キャッシング機能」です。
キャッシング機能とは、クレジットカードに付帯している機能で、ATMなどで現金を借り入れるシステムのことを言います。予め決められたキャッシング枠を上限として現金を借り入れることができます。返済はキャッシング手数料を上乗せして、クレジットカードのショッピング利用と同じ返済日に返済します。
キャッシング機能は現金を借り入れるシステムで、借り入れ時点で銀行口座にお金がなくてもある程度の現金を用意できるのが最大のメリットです。
しかし、キャッシング手数料が上乗せされるため返済額は借入額よりも多くなりますので、障害が発生したときなど緊急時のみ利用するのが理想的です。生活費の補填として利用していると必ず返済に困るようになりますのでキャッシングは計画的な利用が求められます。
ちなみに、お手持ちのクレジットカードでキャッシング機能が利用できるか否かはウェブサービスから確認できたり、カード発行時の台紙などに利用の可否が記載されているのでチェックしておきましょう。キャッシング機能はカード発行後でも追加することが可能なので、必要であればウェブサービスなどから追加の手続きをしてみましょう。その際、別途審査が必要になります。
別のクレジットカードを使う
クレジットカードの障害のパターンとして、ある特定の国際ブランドのみ使えない、ある特定の会社のカードのみ使えない、というパターンが考えられます。
例えば、VISAで障害が発生した場合、JCBやmastercard、American Express、Dinersなどは利用できますので、クレジットカードを複数枚お持ちの方は国際ブランドを分けて保有することをおすすめします。
VISA1枚・mastercard1枚・JCB1枚というように国際ブランドを分けて持つようにすれば、特定の国際ブランドで障害が生じても他の国際ブランドで決済が可能になります。
クレジットカードを複数枚保有されている方でも実は国際ブランドを分けていない方は意外と多いです。3枚保有しているクレジットカードすべてがVISAだったりすると、VISAに障害が発生すると3枚とも利用できなくなってしまうので、やはり、国際ブランドは分けて持つのが理想的です。
これは余談ですが、海外旅行を頻繁にされる方はJCBを避けたほうがいいです。JCBは日本発祥の国際ブランドで国内では様々なシーンで利用できますが、海外では利用できないところが結構多いのでJCBしかないと海外旅行では不便です。VISAとmastercardは世界中で利用できるので、最低でもどちらか一方は保有しておきたいものです。
また、ある特定の会社のカードのみ利用できなくなるパターンの障害に備え、複数枚保有する場合でもカード会社を分けることを検討しましょう。例えば、Suicaにオートチャージできるから便利だといってビューカードを2〜3枚保有しているとビューカードで障害が発生した場合は全滅してしまうので、他のカード会社のクレジットカードも作成しておくのが理想的です。
予め決済を済ませておく
クレジットカード決済のメリットは、事前に決済を済ませられることです。例えば、ホテルを予約するときに事前にクレジットカード決済をしておけば、宿泊当日に決済をする必要がなくなります。これなら、障害が当日発生しても決済は完了しているため、焦ることはありません。
同様の事例で問題なのは、クレジットカード決済を宿泊当日に行う場合です。この場合、障害が発生すると、宿泊当日にクレジットカード決済ができなくなってしまい、現金での決済を求められてしまう可能性があります。ホテル側のシステムの不具合であれば何らかの対策が取られるかもしれませんが、カード会社のシステム不具合だとホテル側もどうしようもないので現金決済を強制されてしまうかもしれません。
このような事態に備え、クレジットカード決済を利用する場合、基本的に事前に決済ができるシーンにおいては決済を完了させておくことをおすすめします。もちろん、現金であれば当日に決済が可能ですが、支払いが高額になると財布に入れておくのも怖いでしょうし、そう考えるとショッピング保険が付帯したクレジットカード決済のほうが安心感がありますよね。
自然災害発生時のクレジットカード利用について
クレジットカードを利用していない方は「地震などの自然災害が発生したときに困るでしょ?」とよくおっしゃられますよね。
たしかにそのとおりです。しかし、それは現金決済派にも同じことが言えるのではないでしょうか。地震で停電が発生したらATMが利用できなくなり現金だって容易に下ろすことはできないですよね。自然災害時には条件は両者ほとんど同じになるわけです。
そこで、地震などの自然災害が発生したときにクレジットカードの利用はどうなってしまうか、一緒に考えてみましょう。日本は地震大国ですし、直近でも大地震は起こっていますので、とても身近な問題です。
まず基礎知識として、自然災害が発生しただけではクレジットカードが利用できなくなることはありません。クレジットカードが利用できなくなるのは、自然災害によって停電が発生し、通信端末が利用不可になってしまった場合です。
例えば、ある地域で地震が発生し、その地域にあるコンビニで停電が発生した場合、そのコンビニではクレジットカードでの決済はできなくなってしまうでしょう。しかし、地震の被害を受けていない他の地域では通常どおりクレジットカード決済が可能なので、クレジットカード自体が機能しなくなったわけではありません。
では、カード会社のシステム管理をするビルで停電が発生した場合はどうでしょう?カード会社側は停電時に備えてシステムを管理する部署では補助電源などを用意していますので、たとえ地震で停電が起こってもクレジットカードが利用できる環境は停止しません。
つまり、地震などの自然災害で停電が発生し、クレジットカードが利用できなくなるのはカード会社側ではなく店舗側に原因があるわけです。クレジットカードは機能としては有効なので、店舗側の停電さえ解消されれば、また通常どおりクレジットカードでの決済は可能になります。
例えば、店舗側が停電対策としてモバイル端末で決済できる環境を用意していたり、バッテリー搭載型の決済端末を保有していれば、停電時でも決済が可能です。実際にそのような決済端末は存在しており、小規模店舗などでは導入しているところもちらほらとあります。大手チェーン店ほどこのような決済端末を導入していなかったりするので、停電時に強いのは意外と小規模店舗だったりします。
とはいえ、多くの店舗では停電時にクレジットカードは利用できなくなってしまうのが現実です。それでも、停電はよほどの被害がない限りそう長くは続きません。早ければ数分から数時間、大震災時でも長くても2〜3日ほどで停電は解消されるものですから、クレジットカードユーザーができる対策として2〜3日分の生活ができる程度の現金を常に自宅のどこかに用意しておくといいでしょう。
障害は起こるがそれでもカード決済すべき理由
いま私たちが知っておくべきことは、クレジットカードには障害が付きものであるということです。ただし、付きものというだけであって、そこまで頻繁に起こるものではないので、大きな心配はいらないというのが本音です。
障害が発生して困るのは、クレジットカードが全く使えなくなってしまうことぐらいです。「え?それって一大事じゃない?」と思うかもしれませんが、そうなったら仕方ないです。自分だけでなく周りの人も使えなくなっているわけですから、困るのは皆一緒です。クレジットカードが使えないならそのときだけ現金決済に切り替えればいい話です。実際にそういう目に遭うのは多くても数年に1回あるかないかです。
クレジットカードの障害は“時々”起こるものだと認識し、そのパターンに合わせ、どのように対応をしていけばいいのかしっかりとシミュレーションしておくことが大事です。と言っても、日本には至るところに銀行やコンビニがあるのでATM難民の方はほとんどいないでしょう。
もし、サイバー攻撃によってカード情報が漏洩してしまったとしましょう。これも一大事ですね。しかしながら、カード情報の漏洩により不正利用されたとしても保険によって全額補償されますので、その点も大きな心配はいりません。これこそクレジットカードの最大の強みといえます。
クレジットカードにはデメリットもありますが、やはり、メリットのほうが圧倒的に多いです。決済でポイントをもらえたり、決済時間を短縮できたり、お得なサービスを受けられるなど、現金決済にはないメリットがたくさんあります。これを享受できないのはとてももったいないです。
クレジットカードはこの10年間で大きく変化を遂げました。電子マネーやQRコード決済(スマホ決済)と紐付けできるようになったり、公共料金や税金の支払いに使えたり、今後もさらに便利なものになっていくでしょう。クレジットカードがもっと便利なものになるには、私たちがもっと積極的に様々なシーンで利用していくことが何よりも大事です。