皆さんはクレジットカードを毎月どのぐらい利用されますか?日本クレジットカード協会が発表した「平成29年度 クレジットに関する消費者向け実態調査結果」によれば、クレジットカード保有者の月の支払平均額は5.8万円でした。
しかし、3万円以下と回答したのが半数に迫る45.7%で、若年層の平均額は3.6万円だったことから、カードを頻繁に使用している方が平均額を引き上げている形となっており、クレジットカード保有者全体の月の支払平均額は思ったほど高くないと推測できます。
いずれにせよ月3〜5万円程度であれば、ほとんどの方が一括払いをしているのではないでしょうか。しかし、たまには大きな買い物をするときだってあると思います。そんなときに役立つのが「分割払い」なのです。
当たり前のように使われる分割払いですが、実は世界的に見て珍しい支払い方法であることはあまり知られていないようです。そこで今回は、日本におけるクレジットカードの分割払いの種類やメリット・デメリット、お得な使い方をわかりやすく解説していきます。
カード1枚で複数の支払い方法を選べるのは日本独自
冒頭でも述べたようにクレジットカードで分割払いができる国は多くなく、それどころか珍しく、さらにいえば、海外では基本的にクレジットカード1枚につき一通りの支払いしかできないことが多いです。つまり、一括専用カードであれば一括払いしかできないわけです。では、分割払いやリボ払いはどうするのかというと、分割払いは分割払い専用カード、リボ払いはリボ払い専用カードを使って決済します。会計をよりスムーズに済ませるために合理的な考えといえるかもしれません。
では、日本ではどのようになっているのかというと、日本のクレジットカードの多くはカード1枚で一括払い・分割払い・リボ払いが選択できるようになっています。クレジットカードを利用したことがある方なら経験したことがあるはずですが、会計時にカードを差し出すと「何回払いに致しますか?」と店員さんに聞かれ、そこで支払い方法や回数を告げることでその支払い方法で決済することができます。これもこれで合理的な考えといえそう、というか、何事も利便性を求める日本らしい考えといえるかもしれません。
クレジットカード1枚で様々な支払い方法ができるようになると財布の中にはカード1枚だけあれば十分になりますし、また、何枚もクレジットカードの審査を受ける必要がなくなるので手間を省けるようになります。面倒なことが苦手な方にとってはこの仕組みに大いに助けられているのではないでしょうか。
分割払いは大きく分けて3種類
一言で“分割払い”と言っても実は色々な支払い方法があります。分割払いは大きく分けると「回数指定払い」「リボルビング払い」「ボーナス払い」の3種類に分けられます。それぞれに違った特徴がありますので、まずはそれぞれの支払い方法の特徴をみて違いを把握していきましょう。
回数指定払い
「回数指定払い」はその名のとおり、回数を自分で指定する支払い方法で、分割払いの中では最もポピュラーといえるでしょう。具体的な利用方法ですが、店頭では店員さんに支払回数を告げる、ネット通販ではご自分で支払回数を選択してそのまま決済を行うといった形になります。
回数は自分で指定できますが、主に選択できるのは3回・5回・6回・10回・12回・15回・18回・20回・24回・30回・36回です(カード会社によって異なる)。回数指定は可能ですが、上記のように指定できる回数には決まりがある場合が多いので、その場合はクレジットカード会社の取り込めに従って回数を決めていくことになります。
回数指定払いを選択した場合、毎月1回の支払日に分割された分の請求がいきますので、3回払いなら3ヶ月、5回払いなら5ヶ月といったように分割回数そのものが返済にかかる月日となることを覚えておきましょう。
一点注意が必要なのが、クレジットカード会社によって分割手数料が異なってくることです。例えば、「PayPayカード」の場合、実質年率は、3回払いで12.19%、5回払いで13.49%、10回払いで14.57%、24回払いで14.95%となっています(下記表を参照)。
支払回数 |
100円あたりの手数料 |
実質年率 |
3回 |
2.04円 |
12.19% |
5回 |
3.40円 |
13.49% |
6回 |
4.08円 |
13.85% |
10回 |
6.80円 |
14.57% |
12回 |
8.16円 |
14.73% |
15回 |
10.2円 |
14.87% |
18回 |
12.24円 |
14.93% |
20回 |
13.60円 |
14.95% |
24回 |
16.32円 |
14.95% |
30回 |
20.4円 |
14.9% |
36回 |
24.48円 |
14.81% |
48回 |
32.64円 |
14.6% |
分割回数が少ないほうが実質年率を低く抑えられますが、分割回数が30回を超えるあたりから実質年率が下がっても100円あたりの手数料は増えていますので、実質年率が下がったからといって必ずしもお得になるわけではないことを覚えておきましょう。
日本のクレジットカードの多くは分割払いが可能になっていますが、外資系のダイナースクラブカードのようにそもそも分割払いが不可能なカードも世の中にはありますので注意が必要です。分割払いを検討されている方は、分割払いが可能かどうかをチェックしたうえで利用するようにしましょう。
リボルビング払い
「リボルビング払い(リボ払い)」は、毎月の支払額を自分で決められる支払い方法です。《3,000円コース》《5,000円コース》《1万円コース》といったように毎月の支払い額をコース別に選択できるようになっている場合が多いです。利用可能枠内で何度も繰り返し利用できることから、返済後に信用が回復するという意味で、信用の回転=Revolutionを語源としています。
回数指定払いもリボルビング払いもどちらも分割払いであることには変わりないですが、一般的に“分割払い”といえば回数指定払いのことを指す場合が多く、リボルビング払いはリボルビング払いとして独立した支払い方法として考えられることが多いです。
リボルビング払いと回数指定払いの大きな違いは、回数指定払いが品物・サービスを追加で購入するとその都度請求されるのに対し、リボルビング払いは追加で品物・サービスを購入しても月々の支払額は一定のままだということです。
ただし、リボルビング払いにも回数指定払いと同様、金利手数料が発生します。リボルビング払いは月々の支払額は一定のままですが、その分、支払期間が長くなり、金利手数料を同時に支払っていく必要があるので、結果的に回数指定払いよりも多くの手数料を支払う可能性が高くなる点に注意しなければなりません。
金利手数料は年率で設定されています。多くのカード会社は15%前後を実質年率として設定しています。詳しい実質年率については各カード会社の公式ホームページ等からご確認ください。実質年率はあくまで“年率”となりますので、例えば、半年間のリボルビング払いであれば、15%の半分の7.5%で計算していくことになります。例えば、1万円の品物をリボ払い(実質年率15%)で購入した場合、1ヶ月(15.0%÷12ヶ月=1.25%)の金利手数料は125円となります。
リボルビング払いは毎月の支払金額を抑えることができるので確かに便利な一面はありますが、継続的に使うことによって支払いの終了時期が見えなくなってしまうので、継続的に利用はおすすめできません。高額の品物・サービスを購入し、その1回の返済にのみ利用するといったような使い方であれば大きな損をせずに済む場合がありますが、いずれにせよハマりやすい人がいるので注意が必要です。
ボーナス払い
日本にはボーナス制度があります。ボーナス制度は、江戸時代に盆と暮れの年2回支給されていた仕着せという制度(商家の住み込み奉公人に対する給与)が由来となっていると言われています。そのボーナス制度を利用したのがボーナス払いで、分割払いの中でも特に世界的に珍しい支払い方法だと言われています。現代ではボーナスは大きな臨時収入であるため、主に高額の品物・サービスを購入する際にボーナス払いを利用される方が多いです。
ボーナス払いはさらに「ボーナス一括払い」と「ボーナス2回払い」に細かく分けることができます。ボーナス一括払いの場合は夏(6月or7月or8月)もしくは冬(11月or12月or1月)に利用金額分を一括でまとめて支払いをします。特殊なのはボーナス2回払いのほうで、利用額の“半額分”を夏(6月or7月or8月)、“残り半額分”を冬(11月or12月or1月)の2つの季節に分けて支払う方法となりますので、支払いを終えるまでにある程度時間に猶予をもたせることができます。
|
支払い時期 |
ボーナス一括払い |
夏(6月or7月or8月)
冬(11月or12月or1月)
のどちらか |
ボーナス2回払い |
夏(6月or7月or8月)
冬(11月or12月or1月)
で二分割 |
カード会社によって締め日が異なるので、例えば、12月に利用した分は冬ではなく夏のボーナス払いに適用させる場合があり、最大7ヶ月支払いを先延ばしにできる可能性があるのが特徴的です。上手に活用すれば、支払いをかなり先延ばしできるので保有カードの締め日を把握しておきたいものです。
ただし、一点注意しなければならないことがあります。通常、回数指定払いの場合の2回払いは金利手数料がかからないですが、ボーナス2回払いの場合は契約内容やカード会社の取り決めによって手数料がかかる場合があります。ボーナス払いをご検討中の方は、まずは利用規約をしっかりと読むなどして注意事項を確認しましょう。
また、ボーナス払いを利用できない期間があることにも注意しなければなりません。例えば、「三井住友カード」の場合、冬のボーナス一括払いの利用可能期間は7月16日〜11月15日で、夏のボーナス一括払いの利用可能期間は12月16日〜6月15日となっていて、これらの期間以外は利用不可となっています。利用不可期間の設定はカード会社によって異なるのでその点も把握しておく必要があります。
他にも、ボーナス払いの利用期間内なのにボーナス払いができない事例があります。理由として考えられるのは、加盟店がそもそもボーナス払いを受け付けていないこと。ボーナス払いできるかどうかは最終的には加盟店に委ねられますので、加盟店側がボーナス払い不可と取り決めていれば受け付けてもらえません。ボーナス払いを検討されている方はボーナス払いが可能であるか否かを確認した上で利用するようにしましょう。
各分割払いのメリット・デメリット
分割払いは月々の負担を減らせる傾向が強いためメリットが多いとばかり思いがちですが、実はメリットばかりではありません。メリットの裏側には当然デメリットもあるので、それぞれの分割払いのメリットとデメリットを把握しておくようにしましょう。
回数指定払いのメリット・デメリット
回数指定払いのメリット
手元に大金を用意できなくても高額の品物・サービスを購入できる
支払いを複数に細かく分けることができるので金銭的負担を減らせる
回数を予め指定するため支払いの終了時期が明確にわかる
通常のカード決済時と同じようにポイントが貯まる
一括払いをあとから分割払いに変更することが可能
リボルビング払いのメリット・デメリット
リボルビング払いのメリット
手元に大金を用意できなくても高額の品物・サービスを購入できる
品物・サービスを追加で購入しても毎月の支払額は一定のまま
通常のカード決済時と同じようにポイントが貯まる
リボ払いにすることでポイント還元率が高くなる場合がある
一括払いをあとからリボ払いに変更することが可能
繰り上げ返済(一括払い)することが可能
リボルビング払いのデメリット
お得感を感じやすくついつい使いすぎてしまう
利用すればするほど支払いの終了時期がわからなくなってくる
金利手数料がかかり続けるので支払いがが長引くと結果的に損をしてしまう
利用可能枠の範囲内で適用されるため、範囲外については一括払いとなる
ボーナス払いのメリット・デメリット
ボーナス払いのデメリット
非該当期間はボーナス払いを利用できない
ボーナス払いを受け付けていない加盟店・サービスが意外と多い
海外で使うことができない
ボーナス2回払いの場合は金利手数料がかかる場合がある
支払い時期が半年以上先になることがあるので利用したことを忘れてしまう可能性がある
回数指定払いとリボルビング払いの最大の違いとは?
回数指定払いもリボルビング払いもどちらも広義では“分割払い”ですが、やはりこの2つは切り離して考えたほうがいいでしょう。その最大の理由は、2つの支払い方法には決定的に違う点があるからです。
回数指定払いとリボルビング払いの最大の違いは、支払回数が決まっているか決まっていないか、です。回数指定払いは支払回数を予め決めるため、支払いの終了時期が明確に分かります。対して、リボルビング払いは毎月の支払い金額のみを予め決めるため、支払いの終了時期がわからないまま支払いを続けていくパターンが多いです。リボルビング払いはカード利用の合計金額に対し適用されるため、リボルビング払いを継続的に利用している人ほど支払いの終了時期を把握できなくなってしまいます。
また、回数指定払いは追加で購入すると請求がその都度上乗せされるので月々の負担額は増えていきますが、リボルビング払いは追加で購入すると請求額は当然増えますが、月々の支払額は常に一定のままです。ただし、どちらも金利手数料がかかってきますので、支払回数が多いリボルビング払いのほうが結果的に多くの金利手数料がかかることになり、損をすることになります。
事実、リボルビング払いを頻繁に利用している方からよく寄せられるのが「支払いがなかなか終わらず金利手数料だけがかかり続けて損をしている気がする」という声。リボルビング払いは確かに月々の負担額は減らせますが、その分、金利手数料がかかり続け、しわ寄せは必ずやってきますので、安易にリボルビング払いを選択しないことが賢明といえるでしょう。リボ払い経験者も未経験者も、「リボ払いは最終手段」ぐらいに思っておいたほうがいいでしょう。
最もお得なクレジットカードの分割払いの使い方
クレジットカードはただの決済カードでしかありませんが、使い手が変わるだけでお得感も変わるものです。例えば、特に何も考えずにカード決済だけしている人とポイントサイトを経由したり電子マネーへのチャージ&利用でポイントの二重とりをしている人では、後者のほうがポイントは貯まりやすいです。このようにクレジットカードというものは使い手に大きく左右される存在なのです。では、分割払いでお得な使い方はできるのでしょうか。
何度か触れていますが、分割払いは基本的に3回以上に分割することを定義しています。つまり、2回払いは正確には分割払いとして定義されていないということです。「だから何?」と思われた方が多いと思いますが、2回払いは分割払いとして定義されていないため、実質的には分割払いなのに金利手数料がかからないようになっているのです。つまり、2回払いが分割払いの中で最もお得な使い方といえるわけです。
例えば、こういう事例でみるとわかりやすいです。数量限定のブランドバッグを購入したいけど価格は10万円、払えないわけではないけど今月10万円を使うのはきつい、こういう場合、2回払いを選択すれば、金利手数料無料で、締め日の翌月と翌々月に支払いを二分割することができるので、月々の負担額を半分に減らすことができるようになります。これこそ2回払いの強みといえるでしょう!
日本におけるクレジットカード決済で最も多いのは1回払いで、その割合は90%以上にもなると言われていますので、実は2回払いのメリットを知っている人は少ないのが現状です。カード会社は金利手数料が自社の収益拡大につながることから、2回払いが金利手数料無料であることをわざわざ謳おうとしないのです。「2回払いまでは金利手数料は無料!」と大々的に公式ホームページに宣伝しているカード会社なんて見たことないですよね?この事実が広く認知されてしまうと、カード会社の収益が減る可能性すらあるのでわざわざ宣伝しないのです。
余談ですが、2回払いをするとカード利用者である私たちには金利手数料はかかりませんが、加盟店は加盟店手数料をカード会社に支払う必要があるので、2回払いを選択した場合、加盟店からは「このお客様はずる賢いなぁ」と思われる可能性があります(笑)。でもそんなことは全然気にしないでください!大事なのは利用者であるあなたがお得感を感じられるかどうかなのですから。
分割払いの心得
筆者はクレジットカードを利用して人生が変わった方をたくさん見てきました。多くの方にとってクレジットカードは人生のプラスになっていましたが、全ての方にとってプラスになったかと言われるとそうではないです。
特に気をつけなければならないのがお金の管理が上手でない人。そういう人は「クレジットカードは魔法のカード」とよく言うのですが、この考え方は今すぐに改めなければなりません。クレジットカードは魔法のカードでもなんでもないからです。クレジットカードは単なる決済カードに過ぎず、常にあなたが“使う側”に立つことが大事です、あなたが“使われる側”になってはいけないのです。
厳しいことを言いますが、分割払いを利用することは“使われる側”になることに等しいです。その理由は、多くのカード会社は金利収入を自社の利益拡大のための戦略として考えており、分割払いをしてくれる顧客は手放したくないと感じているからです。悪い言い方をすれば、分割払いを好む顧客=カモだと思っているわけです。
「リボ払いのお知らせ」といった旨のハガキを受け取ったことがありませんか。筆者の自宅にもよく送られてきますが、そのお知らせには「リボ払いをするとポイントが2倍に!」「あとからリボ払いへの変更が可能!」などと書いていて、やたらとリボ払いを進めてきます。ハガキならまだしも電話でのリボ払いの勧誘をしてくることもあります。残念なことに目先のポイントに釣られてリボ払いに変更した結果、支払いの終了時期が見えなくなってしまい、資金繰りに困って、最終的に返済不能に陥ってしまった事例もあるので注意しなければなりません。
クレジットカードに関する様々な統計をとっている日本クレジットカード協会が発表した「クレジット取引における利用者のアンケート調査結果」では、分割払いやリボ払いの利用率は年収200万円台のもので高く、反対に年収700万円以上のものでは低い、と報告されていました。つまり、分割払いやリボ払いを選択する人はこの先もお金に困る可能性が高いままであるということです。
かくいう筆者も何度か分割払いを利用したことがあります。回数指定払いもリボルビング払いもどちらも利用したことがありますが、正直言うと、“分割払いはとても便利”だと感じました。ただ、この“便利”は本物の“便利”ではないことに早々に気づけたのが幸いでした。
分割払いは基本的に支払いを先延ばしにしているだけであり、これは本来のお金の使い方としては決して正解とは言えません。基本的には、現金と同じく現時点で支払うことができる範囲内での利用を考えるのがクレジットカードの理想的な使い方となってきます。その中で金利手数料がかからない2回払いを上手に活用したりすることで、生活に余裕をもたせることができるようになります。
結論として、回数指定払いやリボルビング払いといった分割払いは闇雲に使わないことが大事だと明言しておきます。「支払いは後だから今お金がなくても大丈夫!」なんて考えはもうやめましょう。特にリボルビング払いは支払能力以上の買い物ができてしまうのでお金の管理が上手でない人にはおすすめできません。社会勉強として1回利用してみる、そんな考えをお持ちの方ほどハマりやすい傾向がありますので、手を出したら負けぐらいに思ったほうがいいです。