クレジットカードを選ぶ理由は様々ですが、多くの方はポイントが効率よく貯まることを重視しています。還元率によってポイントの貯まり方は大きく変わってくるので、なるべく通常還元率の高いクレジットカードを選びたいと思うのは自然の流れです。
近年は、台頭が目覚ましいQRコード決済サービスと相性の良いクレジットカードを選ぶのがトレンドとなっています。その一つが今回取り上げる「ヤフーカード(現PayPayカード)」です。ヤフーカードといえば大人気QRコード決済「PayPay(ペイペイ)」にチャージができ、チャージポイントがもらえるクレジットカードとして人気に火が付きました。
そのヤフーカードが2020年2月よりPayPayチャージポイントと決済ポイントを廃止すると突如発表したことで波紋を呼んでいます。「PayPayのためにヤフーカードを作ったのに...」などの落胆の声が聞かれますが、実際どのような変更となったのかわかりやすく解説していきます。
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ヤフーカード(現PayPayカード)とは
ヤフーカード(現PayPayカード)は、ワイジェイカード株式会社が発行する信販系クレジットカードで、日本最大のポータルサイトであるヤフーが送り出すクレジットカードとして注目されています。
業界最高クラスの通常還元率1.0%を実現(ヤフーショッピング利用時には3.0%にアップ)するなど高還元率カードとしてとても人気です。近年、通常還元率1.0%を超えるクレジットカードは減少傾向にあるため、希少な券種といえるかもしれません。
発行元であるワイジェイカードは信販会社であり、信販系カードとなるため、ユーザーには自営業者や主婦といった属性に不安を抱える方も多く、審査がそこまで厳しくないクレジットカードとしても人気を博しています。
そのため、クレジットカードを初めて作る方をはじめ、他のカードに落ちてしまった方の希望となっている部分もあります。そういった点から注目を集めているところもあります。
ワイジェイカードの決算公告によれば、営業収益は2015年:18億円、2016年:88億円、2017年157億円、2018年:251億円と収益を伸ばしているため、経営状態には何ら問題がなく、むしろと順風満帆と捉えることができ、今後しばらくは審査が急に厳しくなるようなことは考えにくいです。
営業収益が増減を繰り返すなど、安定していないカード会社は急に審査が厳しくなったりすることがあるので、業績を伸ばしている点は属性に不安を抱えるユーザーにとっても朗報と言えるでしょう。ヤフーカードは安定感抜群なので、この先も初心者〜上級者と幅広い層におすすめできるクレジットカードです。
注目はPayPayとの密な連携
高還元率カードとして以前より一部ユーザーから熱く支持されてきたヤフーカードですが、近年、より注目されることになったのはPayPay(ペイペイ)との密な連携でした。
PayPay(ペイペイ)をご存じない方に簡単に説明すると、二次元コードを用いた事前にチャージが必要なQRコード決済サービスです。手数料の安さなどから様々な店舗で導入されており、日本国内で最も知名度の高いQRコード決済サービスとなっています。
QRコード決済を利用するメリットの一つにポイント還元率の高さが挙げられます。クレジットカードからチャージすることで付与されるチャージポイント、そしてQRコード決済を利用することで付与される利用ポイントの2つのポイントを獲得できるため、クレジットカードを単体で利用するよりもポイントを貯めやすいのが最大のメリットです。
PayPayは他のQRコード決済サービスと比べて還元率が良いだけでなく、様々なキャンペーンを実施しているためポイントの貯めやすさで特に人気を博しています。事実、ポイント狙いでPayPayを利用する方はたくさんいますので、まだ利用したことがない方はぜひ検討してもらいたいものです。
PayPayは、クレジットカード、銀行口座、コンビニから残高のチャージが可能ですが、実はクレジットカードに関してはヤフーカードからしかチャージできません(2020年1月現在)。
なぜヤフーカードだけ優遇されているのかというと、PayPayがソフトバンクとヤフーの共同で開発された決済サービスだからです。ヤフーカードの発行元であるワイジェイカードはヤフーの子会社となりますので、ヤフーカードが優遇されているのは納得ですよね。この先もPayPay関連でヤフーカードが優遇される状態は続くでしょう。
PayPayは日本国内で最もユーザー数の多いQRコード決済サービスの一つなので、そのユーザーらが一挙にヤフーカードを作ったとなれば、先述したようにヤフーカードの営業利益が爆発的に伸びたのも納得できます。通常、営業利益がここまで爆発的に伸びることはなかなかありません。そのぐらいPayPayが与えた影響は大きかったのです。
2020年2月よりPayPayチャージポイントを廃止
PayPayにチャージして1%のチャージポイント、決済でさらに1%の決済ポイントが付与されるいうことで、ヤフーカードは注目されました。特に2019年はPayPayが流行したこともあり、ヤフーカードを作られる方が急増したのですが、「2020年2月からヤフーカードによるPayPay関連のポイントが廃止される」というニュースが2019年12月末に突如舞い込んできました。
2020/1/31まで | 2020/2/1から | |
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PayPay決済 | Tポイント1% | なし |
PayPay残高チャージ | Tポイント1% | なし |
これまで、PayPayへのチャージで1%のポイント還元、そして、PayPay決済で1%のポイントの還元を受けられたため、ポイントの二重とり(チャージポイント+決済ポイント)ができることが最大のメリットだっただけにこのメリットを享受できなくなってしまうことから、かなり大きな議論を呼びました。
突然の悲報に「え?ちょっと待ってよ!」思った方は多いのではないでしょうか。SNS上では「改悪だ」「もうヤフーカードは終わり」「PayPay使うのやめよ」「違うカードに乗り換えよ」といった辛辣な意見が見られました。
PayPayへのチャージポイントだけでなく、PayPay決済におけるヤフーカードへのポイント付与も廃止されますので、今まで感じていたポイントのうまみを最大限に実感できなくなってしまうのは大きな失望を味わうことになりそうです。ただし、PayPayボーナスは引き続きPayPayから進呈されるとのことです。
nanacoチャージポイントも廃止
チャージポイント・決済ポイント廃止だけでも憂慮すべき問題だったのに、実はnanacoのチャージポイント(0.5%還元)も廃止されることも記載されており、さらなる困惑を招きました。
2020/1/31まで | 2020/2/1から | |
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nanacoクレカチャージ | Tポイント0.5% | なし |
nanacoは事前にチャージが必要な電子マネーで、PayPayと同じぐらい使えるシーンが多いため、電子マネーを好むユーザーにとってはなくてはならない存在となっています。
地方ではご高齢の方でもスーパーやコンビニでnanacoを利用していたりするので、PayPayよりもユーザーの年齢層は幅広いといえるかもしれません。そのnanacoへのチャージポイントも廃止されることで、ヤフーカードはチャージポイントをもらうためのクレジットカードでなくなってしまいました。
ただ、nanacoはもともとチャージポイントの付与対象外となっているクレジットカードが非常に多かったのも事実です。そこでnanacoチャージポイントが付与されるクレジットカードとしてヤフーカードに注目が集まっていたのですが、今回、PayPayとnanacoの2つのチャージポイントの付与が同時に廃止されるということで、“ヤフーカードが大改悪”と評されてしまったのです。実際そうだと思います。
nanacoもPayPayと同様にポイントの二重とりができる決済サービスの一つだっただけに、ヤフーカードの今回の改悪については落胆の声はとても大きいです。ダブルパンチとはまさにこのことです。
ちなみに、nanacoチャージポイントが付与されるクレジットカードは「リクルートカード」(2020年3月12日以降はnanacoチャージのカード登録対象除外に。同年3月12日以前に登録したリクルートカードであれば継続利用可能)をはじめ「セブンカード・プラス」「JMBローソンPontaカードVisa」などがあります(2020年1月現在)。
チャージポイントが廃止される理由とは?
今回、ヤフーカードがPayPayチャージポイント・決済ポイント付与を廃止する発表があり、多くの方は「寝耳に水だった」と感じたでしょうが、実は筆者をはじめとしたクレジットカード愛好家はこの流れを予想していた方が多かったです。
ヤフーカードがポイント付与を廃止する決断を下したのは、実は何も特殊なケースではなく高還元率カードによくあるケースだからです。
ポイント還元の仕組みがわかると理解しやすいです。私たちがクレジットカードを利用して獲得しているポイントは、お店(=カード加盟店)がカード会社に対して支払っている加盟店手数料などのおかげでもらうことができています。
お店側はクレジットカード決済を利用する環境を整える代わりにカード会社にお礼のような形で手数料(=加盟店手数料※)を支払っているのです。このような手数料収入によってカード会社は安定した運営をしていくことができます。
※ 加盟店手数料は、家電量販店やコンビニでは1〜1.5%と低いのに対し、デパートでは2〜3%、一般小売店では3〜5%、居酒屋やバー/クラブでは4〜7%と業種によって大きく異なります。一般小売店や居酒屋、バー/クラブでクレジットカード決済を導入していない店舗が多いのはこの負担の大きさが理由となっています。
カード会社が黒字経営をしていくためにはポイント還元が加盟店手数料を上回ることがないようにしなければなりません(正確にはポイント還元の限界=加盟店手数料+経費)。加盟店手数料を上回るようなポイント還元をしているといずれに赤字経営になってしまい、会社が傾いてしまうわけです。だから、高還元率だった多くのカードが軒並み還元率を下げるような動きが近年増えてきているのです。
今回、ヤフーカードのチャージポイント・決済ポイント付与が廃止される理由も同様です。ヤフーカード利用で1%還元+PayPayチャージで1%還元+PayPay利用で1.5%還元、これだけで3.5%還元になるので正直言ってポイントを付与しすぎていました。キャンペーン時にはさらに還元率がアップするのでまさにトゥーマッチでした。
ヤフーカードの発行元であるワイジェイカードが各店舗にどのような割合で加盟店手数料をもらっているかわかりませんが、公になっている還元率を見ただけでもヤフーカードの運営元のワイジェイカード側の負担はかなり大きくなっていたはずで、カード会社として安定的な運営を続けていくためにこのような事態を脱却したいと考えていたはずです。
ワイジェイカードの業績は好調ですので、まだこの先もしばらくはポイントを付与できたかもしれませんが、既に多くのPayPayユーザーを獲得し認知も広まったと会社側は判断し、ここでポイント制度を廃止しても問題ないと考えたのでしょう。業績が好調だからこそポイント廃止という決断ができたのかもしれません。
人は一度利用し始めたサービスを他のものに乗り換えることを面倒だと考えるものですから、ユーザーである私たちからすればポイント廃止は大きな悲報でしたが、今後もPayPayを利用する方は多いでしょうし、利用できる店舗も増えることが予想されるので、今回の件は改悪案件と言われながらもヤフーの戦略的勝利と言えるのではないでしょうか。
今後の展望について
PayPayと密な連携をしてきたヤフーカードには明るい未来が待っている、と誰しもが思っていました。クレジットカード愛好家たちも「これからしばらくはヤフーカードの時代だ」と口を揃えて言っていました。
ただ、先述したようにポイント還元制度にはどうしても限界があります。なので、今回のような決断はいつしか下されると実はわかっていた愛好家も実は多かったです。過去に同じようなことは何度も繰り返されており、今後も繰り返されるはずです。
ただ、今回のPayPayとヤフーカードの件については、時期が思ったよりも早かっただけに驚きが隠せなかった愛好家は多かったです。筆者もその一人でした。
せめて、キャッシュレス・消費者還元事業が終りを迎える2020年6月末ぐらいまではポイント付与を継続してもらいたかったものです。それがPayPayをはじめとしたキャッシュレス決済の普及にもつながるからです。それとも、ヤフー側は既にキャッシュレス決済は普及したと判断したのでしょうか。
一部からは「ヤフーの戦略が見事ハマった」なんて揶揄されていたりもします。というのも、PayPayでお得なのはヤフーカードということが広く認識され、実際にヤフーカードの契約者も急増したためです。真の勝者はヤフーなのです。
ただ、今回のような改悪案件が続出すると「やっぱりキャッシュレス決済は未来がない」と言われてしまうので、それなら最初からあまり期待させないでほしいと感じている方は多いかもしれません。
でも、その考え方には異論を唱えたいです。例えば、現金決済ならそもそもポイント還元のうまみを感じることってできませんよね?現金をたくさん持ち歩かなければならない&会計に時間がかかる、事業者は会計ミスがあると処理が面倒といったデメリットがあるので、消費者・事業者が揃ってキャッシュレス決済に移行することに大きな意味があります。
PayPayに関しては、多くの方が願っているのは、ヤフーカード以外のクレジットカードでもチャージできるようにしてほしい、ということではないでしょうか。ポイントが付与されなくてもいいのでヤフーカード以外が利用できるようになればさらにユーザーは増える可能性があります。
ヤフーカードによるポイント付与が廃止されたあとは銀行口座からチャージするのがメインになってくるでしょう。実際に使ってみると楽チンではありますが、最初の設定が面倒なのでそこが新規参入者の障壁となる可能性はあります。
理想的なのは、2020年2月以降に何らかの施策を実施することです。例えば、ポイントが廃止されるなら、PayPayの還元率をさらにアップさせるなど。それならPayPayでポイントが付与されることになるので、ヤフーカードでポイントが貯まるよりも使い勝手が良くなります。
他にも、ヤフーはLINEと経営統合しましたので、PayPayとLINE Payが統合するような動きがあるかもしれません。一部有識者からはPayPayがLINE Payに吸収されるのでは?という声も上がっていますが、どちらにせよ、PayPayとLINE Payはユーザーを取り合っているのでどちらかに統合したほうがユーザーとしては使いやすくなるはずです。
メッセージアプリとしてLINEを利用している方は多いですから、LINE Payに統合したほうが実は良いのかもしれません。ちなみにLINE Payの場合、クレジットカードからのチャージはLINE Payカードに限定されますので(2020年1月時点)、こうなってくると今後、クレジットカードでQRコード決済サービスにチャージすることは時代遅れになってくる可能性があります。実際、銀行口座で紐付けできれば何ら問題ないですからね。
PayPayはトップの座を譲らないと予想
ヤフーカードによるPayPayチャージポイント・決済ポイントの廃止、この一件でPayPayの人気に陰りが見え始めるか、と問われたら筆者は「NO!」と答えます。
投資やお金についてまとめたサイト、マネージンの「なぜその決済方法を使うの?」によれば、PayPayは「還元率が高い」「素早く決済できる」の2つの質問でトップの回答を得ています。
つまり、PayPayはユーザーからは既に厚く支持されているわけです。多くの人は一度良いと感じたものをすぐには変えない傾向がありますから、今後もしばらくはPayPayの利用率は下がらず、トップの座を守り続けると筆者は予想しています。少なくとも2020年は。
ただ、先述したようにヤフーとLINEの経営統合により、PayPayとLINE Payが統合し、LINE PayがPayPayを吸収するようなことがあれば、LINE PayがPayPayに取って代わる存在となるでしょう。筆者もそうなれば、LINE Payをメインに利用することを考えます。
完全なる推測ですが、もしLINE PayがPayPayを吸収した場合、PayPayの100億円キャンペーンのような大々的な還元キャンペーンを実施することが予想されます。
100億円キャンペーンの第一弾はかなり話題を呼んだことを覚えていますよね?還元の上限額がなかったため、とにかくたくさんPayPayを使うユーザーが登場しました。そのおかげで登録ユーザー数が増えたこともありますし、世間に広く認知されることとなりました。
PayPayの100億円キャンペーン第一弾ほどの破壊力はないかもしれませんが、それに似たようなインパクトのあるキャンペーンを実施する可能性があるので、そこはそこで期待したいものです。
消費者である私たちとしては、今後の動きをしっかりと見守ることが大事です。キャッシュレス決済に関する業界の動きはクレジットカード愛好家の私たちでも追いつくのが大変なところがあるので、しっかりとアンテナを張って皆さんに有益な情報をお送りできるようにしていきたいと考えています。
消費者である私たちはキャッシュレス決済を利用して業界を盛り上げることが大事です。現金決済が根付く日本を変えるには皆さんの力が欠かせません。